はじめに
こんにちは。歯科オーラルクリニックエクラ院長の 小出 です。
寒さが厳しくなり、空気も乾燥してきました。今年もまた、インフルエンザや感染症が猛威を振るう季節がやってきましたね。 テレビやニュースでは連日、学級閉鎖や感染者数の増加が報じられています。
皆様は、どんな対策をされていますか? 手洗い、うがい、マスク、ワクチンの接種…。もちろん、これらはすべて重要です。 しかし、もし私が「それだけでは不十分です」と言ったら、驚かれるでしょうか?
実は、最新の研究によって、「歯磨き」こそが、インフルエンザなどのウイルス感染を防ぐための「最後の砦」であることが科学的に証明されつつあるのです。
さらに、もう一つ。 皆様はご自分のお口の中に、「高級外車1台分」あるいは「家一軒分」に相当する資産があることをご存知でしょうか?
今回は、この冬を健康に乗り切るための「最新のインフルエンザ予防法」と、知っている人だけが得をする「歯の資産価値」について、歯科医師の視点から徹底的に解説します。 少し長くなりますが、読み終える頃には、今すぐ洗面所に行って歯を磨きたくなるはずです。
ご自身と、大切なご家族を守るための「完全保存版」としてお読みください。

第1章:衝撃の事実!「歯磨き」がインフルエンザを撃退するメカニズム
「歯磨きでインフルエンザ予防?」 そう聞いて、首をかしげる方も多いかもしれません。虫歯予防ならわかりますが、ウイルスとは関係なさそうに思えますよね。
しかし、2024年から2025年にかけて発表された最新の研究(ロッテと順天堂大学の共同研究など)が、その常識を覆しました。
1. 唾液は「天然のワクチン」である
私たちの口の中には、常に唾液が流れています。実はこの唾液の中に、ウイルスと戦うための強力な武器が含まれているのです。それが「IgA(免疫グロブリンA)」という抗体です。
IgAは、口や鼻から侵入してきたウイルスにベタッと貼り付き、その活動を無力化(中和)してくれます。つまり、粘膜でウイルスをブロックする「門番」のような役割を果たしています。 このIgAの量が多ければ多いほど、インフルエンザなどの感染症にかかりにくくなります。
2. 歯磨きが「門番」を増やす
最新の研究で、「歯ブラシやガムで歯ぐきを刺激すると、唾液中のIgA濃度が上昇する」ことが確認されました。 ただ唾液が出るだけでなく、「免疫力の高い、質の良い唾液」が出るようになるのです。
これは、歯ブラシによる物理的な刺激が、唾液腺やその周辺の免疫システムを活性化させるためと考えられています。
つまり、歯磨きは単に汚れを落とす「掃除」ではなく、免疫力を高める「トレーニング」だったのです。
3. 逆に、汚い口は「ウイルスの協力者」になる
ここが最も怖いところです。 歯磨きをおろそかにして、お口の中に「プラーク(歯垢)」が溜まっているとどうなるでしょうか。
プラークの中にいる歯周病菌などの細菌は、「プロテアーゼ」という酵素を出します。 実はインフルエンザウイルスは、単独では細胞の中に侵入するのが難しいのですが、この「プロテアーゼ」という酵素があると、細胞への侵入が容易になります。
わかりやすく言うと、お口の細菌がウイルスのために「ドアの鍵」を開けてあげてしまうのです。
-
口がキレイな人:IgA(門番)がウイルスを撃退する。
-
口が汚い人:プロテアーゼ(裏切り者)がウイルスを招き入れる。
この差は歴然です。 マスクをしていても、お口の中が汚れていれば、内側からウイルス感染のリスクを高めてしまっている。これが「隠れ感染リスク」の正体です。
第2章:あなたの口には「2800万円」の価値がある
さて、少し視点を変えて「お金」の話をしましょう。 「歯磨きが面倒くさい」「定期検診に行く時間がない」 そう感じることもあるかと思います。しかし、その「歯1本」にどれだけの金銭的価値があるか、考えたことはありますか?
歯1本=約80万円!?
交通事故の賠償金などの算定基準を参考にすると、歯1本の価値は約80万円〜100万円と言われることがあります。
大人の歯は、親知らずを除いて28本あります。 単純計算してみましょう。 80万円 × 28本 = 2,240万円
もし親知らずを含めたり、噛み合わせの機能を含めて評価したりすれば、その価値は3,000万円近くにもなると言われています。
失って初めてわかる「プライスレス」な価値
「インプラントがあるから大丈夫でしょ?」と思われるかもしれません。 確かにインプラントは素晴らしい技術ですが、1本あたり30万〜50万円ほどの費用がかかります。しかも、天然の歯にある「歯根膜(噛みごたえを感じるセンサー)」はありません。
-
美味しく食事を味わうこと。
-
はっきりと喋ること。
-
食いしばって力を出すこと。
-
素敵な笑顔を作ること。
これらは、天然の歯があってこそ。 つまり、皆様のお口の中には、高級外車や新築マンションに匹敵する「資産」が存在しているのです。
この「2800万円の資産」を維持するためのコスト(歯ブラシ代や検診代)は、年間で数万円程度です。 これほどコストパフォーマンスの良い(利回りの高い)投資は、他にはありません。
逆に、歯磨きをサボることは、この2800万円の資産をドブに捨て、さらにインフルエンザという「病気のリスク」まで背負い込むことになります。これほどもったいないことはないと思いませんか?

第3章:歯科医直伝!この冬の「最強感染予防ルーティン」
では、具体的にどうすれば「免疫力アップ」と「資産防衛」を同時に達成できるのでしょうか。 歯科医として推奨する、この冬の「最強オーラルケア・ルーティン」をご紹介します。
① 「朝起きてすぐ」の歯磨きが運命を分ける
多くの人は「朝ごはんを食べた後」に歯を磨きます。もちろんそれも大切ですが、感染予防の観点からは「朝起きてすぐ」が最も重要です。
寝ている間は唾液の分泌が減るため、口の中の細菌は爆発的に増殖しています。朝起きた時のお口の中は、「便10グラム分の細菌」がいると言われるほど汚れています。 その状態で朝食を食べたり水を飲んだりすることは、細菌やウイルスを体内に流し込むようなものです。
【実践ポイント】
-
朝起きたら、うがいだけでなく、軽くブラッシングをする。
-
それから朝食を摂る。
② 歯ブラシ+「舌磨き」でウイルスの温床を断つ
インフルエンザウイルスや細菌が最も居心地が良い場所、それは「舌の上」です。 舌の表面にある苔のような汚れ(舌苔:ぜったい)は、細菌の塊です。ここを掃除しない手はありません。
【実践ポイント】
-
1日1回(朝がおすすめ)、専用の「舌ブラシ」で優しく奥から手前へ撫でる。
-
※歯ブラシでゴシゴシ擦ると舌を傷つけるので、必ず専用ブラシか、柔らかいブラシを使いましょう。
③ 唾液腺マッサージで「IgA」をドバドバ出す
先ほどの研究にもあったように、唾液の「質」と「量」を高めることが免疫のカギです。 お風呂に入っている時や、テレビを見ている時に、唾液腺マッサージを行いましょう。
【実践ポイント】
-
耳下腺(じかせん):耳の下、上の奥歯のあたりを指全体で円を描くようにマッサージ。
-
顎下腺(がっかせん):顎の骨の内側、柔らかい部分を親指で突き上げるように押す。
-
これを行うだけで、じわ〜っと唾液が出てくるのがわかります。これが「免疫ワクチン」です。
④ 寝る前の「本気磨き」と「フロス」
寝ている間の細菌増殖を防ぐために、夜のケアは時間をかけて行います。 歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れの60%程度しか落ちません。残りの40%は、フロス(糸ようじ)や歯間ブラシを使わないと取れないのです。
「2800万円の資産を守るメンテナンス」だと思って、夜だけはフロスを通してください。
第4章:年代別・注意すべきポイント

オーラルケアの重要性は全員共通ですが、年代によって特に気をつけるべきポイントが異なります。
【お子様】(特に受験生!)
受験シーズンとインフルエンザシーズンは重なります。 勉強中の「ながら食べ」や、集中している時の「口呼吸(お口ポカン)」は、口の中を乾燥させ、ウイルスの格好の餌食になります。
-
対策:勉強の合間に、ガム(キシリトール100%推奨)を噛むこと。噛むことで脳の血流も良くなり、唾液も出て免疫力が上がり、一石二鳥です。
【働き盛りの方】
忙しくて昼の歯磨きができない方も多いでしょう。
-
対策:ランチの後に「水うがい」だけでもする。あるいは、緑茶(カテキンによる殺菌効果)を飲む。そして、夜の歯磨きを徹底する。定期検診を「ビジネスの投資」と捉えて予約する。
【ご高齢の方】
高齢者にとって、お口の汚れはインフルエンザだけでなく、命に関わる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」の原因になります。
-
対策:ご自身での歯磨きが難しい場合は、ご家族や介護職の方による口腔ケアが必須です。また、入れ歯にも「カンジダ菌」などのカビが付きやすいので、毎日専用の洗浄剤で洗ってください。

第5章:なぜ「プロのケア」が必要なのか?
「毎日こんなに頑張って磨いているから、歯医者には行かなくていいよね?」 そう思われるかもしれません。 しかし、残念ながら自分で行う歯磨き(セルフケア)には限界があります。
バイオフィルムの恐怖
口の中の細菌は、時間が経つと「バイオフィルム」という強力な膜を作ります。これは、キッチンの排水溝のヌメリと同じようなものです。 このバイオフィルムは非常に頑丈で、歯ブラシで軽く擦ったくらいでは落ちません。しかも、抗菌剤(薬用成分)も跳ね返してしまいます。
この膜を完全に破壊し、除去できるのは、歯科医院にある専用の機械(PMTCなど)だけです。
-
セルフケア:毎日のゴミ出し
-
プロフェッショナルケア:年末の大掃除+家の補修
この両輪が揃って初めて、2800万円の資産は守られ、インフルエンザに負けない強力な免疫バリアが完成します。 3ヶ月に1回、美容院に行くような感覚で、歯科医院でのクリーニングを受けてください。それが、最も賢い「健康への投資」です。
おわりに:お口は「命の入り口」

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は、
-
歯磨きがインフルエンザ予防になる(唾液中のIgAがウイルスを撃退する)
-
歯1本には80万円以上の価値があり、お口全体で2800万円の資産である
-
汚い口はウイルスを招き入れる「裏切り者」になる
というお話をさせていただきました。
たかが歯磨き、されど歯磨き。 その一本一本のブラシの動きが、ウイルスから身を守り、将来の資産を守り、ひいては皆様の「人生の質(QOL)」を守ることに繋がっています。
「最近、歯医者に行けていないな」 「そういえば、歯ブラシの毛先が開いているな」
そう思った今が、吉日です。 インフルエンザが本格的に流行する前に、ぜひ一度、当院へ検診にいらしてください。 私たちプロのスタッフが、皆様の大切な資産(歯)をピカピカに磨き上げ、免疫力を最大限に高めるお手伝いをさせていただきます。
この冬、皆様が健康で笑顔で過ごせますように。 洗面所での「シャカシャカ」という音が、ウイルスのいない明るい未来を作ります。
※当院では、徹底した感染症対策を行っております。安心してご来院ください。 ※インフルエンザ対策として、お家でできるケアグッズ(高機能歯ブラシや洗口液)の選び方もアドバイスしています。お気軽にお声がけください。
