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2026年4月施行予定|歯科診療報酬改定の重要ポイントを歯科医師がわかりやすく解説

こんにちは、歯科医師の小出です。

私たちの歯科医療を取り巻く環境は、いま大きな転換期を迎えています。2026年4月に予定されている歯科診療報酬改定は、単なる点数の増減にとどまらず、これからの日本の歯科医療の方向性そのものを示す重要な節目となります。

新年度を目前に控えたこの時期だからこそ、「どのような改定が行われるのか」「患者さんの治療や選択肢にどのような変化があるのか」を、現時点で示されている決定事項や議論の方向性を踏まえながら、できるだけわかりやすく整理してお伝えしたいと思います。

1. 2026年歯科診療報酬改定の全体像

診療報酬改定は原則として2年に1度行われ、社会情勢や医療政策を反映した形で制度が見直されます。2026年改定の背景には、次のような大きな流れがあります。

  • 超高齢社会の進行と口腔管理の重要性の高まり
  • 物価・材料費・人件費の上昇
  • 医療DX(デジタル化)の本格推進
  • 「治す医療」から「守り、支える医療」へのシフト

今回の改定は、補綴治療の再評価と予防・管理型歯科医療の強化を軸に、持続可能で質の高い歯科医療体制を構築することが大きな目的とされています。

2. 最大の注目点|保険適用範囲の拡大とデジタル化

今回の改定で最も注目されている柱の一つが、歯科医療のデジタル化推進と、それに伴う保険適用範囲の拡大です。

これまで自費診療のイメージが強かった先進的な技術や材料が、段階的に保険診療へと取り込まれてきました。その流れを象徴する存在が、CAD/CAM(キャドキャム)システムです。

● CAD/CAM冠とは

CAD/CAM冠とは、コンピューター上で歯の形を設計し、専用の機器でハイブリッドレジンブロックを削り出して作製する白い被せ物です。銀歯に代わる選択肢として、

  • 見た目が自然
  • 金属アレルギーの心配が少ない

といった理由から、多くの患者さんに選ばれてきました。

3. CAD/CAM冠の保険適用拡大|何が変わるのか

これまでCAD/CAM冠を奥歯(大臼歯)に使用する場合には、噛み合わせや残っている歯の本数など、いわゆる咬合支持要件が厳しく設定されていました。

2026年改定では、この要件が大幅に見直される見通しです。

● 期待される主な変更点

  • 大臼歯部における適用条件の緩和
  • 咬合支持の考え方の整理・現実化
  • 症例に応じた柔軟な適用

これにより、これまで銀歯しか選択肢がなかったケースでも、保険診療の範囲内で白い被せ物を選べる可能性が大きく広がります。

これは見た目の改善だけでなく、口腔内のメタルフリー化を進め、金属アレルギーのリスク低減につながるという点で、健康面においても大きな意義があります。

4. CAD/CAMブリッジと光学印象の拡充

今回の改定では、被せ物だけでなくブリッジへのCAD/CAM適用拡大も議論されています。特に第一大臼歯を含むケースへの拡大が実現すれば、歯を失った際の治療選択肢が大きく広がります。

また、型取りに関しても、従来の印象材を使った方法に加え、口腔内スキャナーによる光学印象の評価が拡充される予定です。

  • 嘔吐反射などの不快感が少ない
  • デジタルデータによる高精度な補綴物作製

といったメリットがあり、患者さん・歯科医師双方にとって利点の大きい変化といえます。

5. 「治す」から「守る」へ|予防・管理型歯科医療の強化

今回の改定でもう一つ重要なのが、歯周病管理や口腔機能管理の評価強化です。

● 歯周病管理の整理

歯周病安定期治療(SPT)や重症化予防治療について、枠組みを整理し、

  • 患者さんにとって分かりやすい管理体系
  • 継続的なケアを重視する仕組み

へと見直される方向で調整が進んでいます。

● 口腔機能低下症・発達不全症への対応

高齢者の口腔機能低下症、小児の口腔機能発達不全症に対する評価も強化されます。噛む・飲み込む・話すといった基本的な機能を守ることが、全身の健康や成長を支える重要な役割として、より明確に位置づけられます。

6. 医療DXと歯科医療の進化

マイナンバーカードによる保険証利用、オンライン資格確認、電子処方箋など、医療DXの推進も改定の重要な要素です。

医科と歯科の情報連携が進むことで、

  • 服薬情報を踏まえた安全な治療
  • 全身疾患と関連づけた歯科治療

がより当たり前のものになっていきます。

7. 歯科医療を支える人材と経営基盤

物価や人件費の上昇を背景に、歯科衛生士・歯科技工士などの処遇改善を目的としたベースアップ評価料の拡充も進められます。

質の高い歯科医療を継続的に提供するためには、医療を支える人材が安心して働ける環境づくりが不可欠です。その考え方が、今回の改定の根底にあります。

8. 患者さんへの影響とこれからの歯科医療

今回の改定により、窓口負担に多少の変化が生じる可能性はありますが、それは同時に、より質の高い歯科医療を保険の枠組みで受けるための投資ともいえます。

2026年4月以降は、

  • 治療の選択肢
  • メンテナンスや口腔管理の重要性

について、これまで以上に丁寧な説明を受ける機会が増えるでしょう。

CAD/CAM冠の適用拡大をきっかけに、銀歯を白くしたい、将来を見据えて口腔機能を守りたいといったご相談があれば、ぜひお気軽にお声がけください。

9. 患者さんからよくある質問(Q&A)

Q1. 白い歯(CAD/CAM冠)はいくらくらいかかりますか?

保険診療でCAD/CAM冠を作製する場合、3割負担の方で、おおよそ5,000円〜8,000円前後(※1本あたり)が目安となります。

ただし、

  • お口の状態
  • 土台(コア)の有無
  • 他に必要な処置

によって費用は前後します。正確な金額は診察・検査後にご説明しますので、ご安心ください。

Q2. 奥歯はすべて白い歯にできますか?

2026年4月の改定により、奥歯(大臼歯)へのCAD/CAM冠の保険適用条件が緩和される見込みです。

ただし、

  • 噛み合わせの状態
  • 残っている歯の本数
  • 歯ぎしり・食いしばりの有無

などによっては、適応外となる場合もあります。

「全部白くできるかどうか」は個々のお口の状態によって異なりますので、診察時に詳しくご相談ください。

Q3. 銀歯と白い歯、どちらが長持ちしますか?

一概にどちらが優れているとは言えませんが、適切な症例選択と定期的なメンテナンスが行われていれば、CAD/CAM冠も十分な耐久性を期待できます。

一方で、強い噛みしめや歯ぎしりがある場合は、割れや欠けのリスクを考慮する必要があります。そのため、当院では見た目だけでなく、機能面・安全面を含めて最適な材料をご提案しています。

Q4. 型取りは楽になりますか?

はい。今回の改定では、口腔内スキャナーによる光学印象の評価拡充が予定されています。

これにより、

  • 粘土のような材料をお口に入れる必要がない
  • 嘔吐反射が少ない
  • より精密な被せ物が作れる

といったメリットがあります。

I-TERO:口腔内スキャナー(3Dデジタルスキャナー)について

引用:https://www.itero.com/ja-JP/our-scanners

引用:https://www.itero.com/ja-JP/our-scanners

当院ではI-TEROを導入しております。

I-TEROとは?

I-TERO(iTero)は、主に歯科医院で使用される
👉 口腔内スキャナー(3Dデジタルスキャナー)の代表的なシステムです。

従来のような「粘土状の材料で型を取る方法」に代わり、
小型カメラで歯や歯ぐきをスキャンするだけで、精密な歯型データを取得できます。


I-TEROで何ができるの?
① 歯型取り(光学印象)
  • お口の中をなぞるだけで3Dデータを取得

  • 嘔吐反射が少なく、患者さんの負担が大幅に軽減

  • ミクロン単位の高精度

👉 CAD/CAM冠・インレー・ブリッジ作製に使用


② 矯正治療(インビザライン)との連携

I-TEROは**インビザライン(マウスピース矯正)**と非常に相性が良く、

  • 治療前・治療後の歯並びを3Dシミュレーション

  • 「このまま進むとどうなるか」をその場で確認

  • 治療ゴールを患者さんと共有できる

👉 説明の“見える化”が可能


③ 被せ物・詰め物の精度向上
  • データは歯科技工所へ即時送信

  • 人為的誤差が少ない

  • 適合の良い補綴物が作りやすい

結果として
✔ 外れにくい
✔ 長持ちしやすい
✔ 再治療リスクの低減
につながります。


従来の型取りとの違い
項目 従来の印象 I-TERO
患者負担 嘔吐反射・不快感あり ほぼなし
精度 変形リスクあり 非常に高精度
データ管理 石膏模型 デジタル保存
再製作 再印象が必要 データ再利用可能

I-TEROは保険診療でも使える?

ここが重要なポイントです。

  • I-TERO自体は自費機器

  • しかし
    👉 保険診療のCAD/CAM冠・インレーでも使用可能

  • 2026年4月診療報酬改定では
    光学印象の評価拡充が進む見込み

つまり、

患者さんは保険のまま
型取りだけが「楽で精密」になる

という流れが加速します。


患者さんにとってのメリットまとめ
  • 型取りが楽・早い・気持ち悪くない

  • 仕上がりが自然で精度が高い

  • 治療説明が視覚的で分かりやすい

  • 再治療リスクの低減


歯科医師の視点から

I-TEROは単なる「便利な機械」ではなく、

  • デジタル歯科医療の中核

  • CAD/CAM・予防・医療DXと直結

  • 2026年以降の保険診療との親和性が高い

という点で、これからの歯科医療を支える基盤技術と言えます。

10. まとめ|新しい制度を前向きに活かすために

2026年4月施行予定の歯科診療報酬改定は、

  • CAD/CAM冠・ブリッジの保険適用拡大
  • デジタル歯科医療の本格化
  • 予防・管理型歯科医療への転換

といった点が大きな特徴です。

私たち歯科医師は、制度が変わっても「目の前の患者さんの健康を守る」という本質を忘れることなく、この新しい仕組みを最大限に活用し、皆さまの人生に寄り添う歯科医療を提供していきたいと考えています。

本記事の内容は、現時点での決定事項および議論の方向性をもとにまとめたものです。正式な点数や算定要件については、今後発表される最新情報をご確認ください。

ご自身の治療にどのような影響があるのか詳しく知りたい場合は、カウンセリングの際にお気軽にご相談ください。

歯科医師 小出

医療法人 エクラ会 歯科オーラルクリニック エクラ
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小出貴照

歯科オーラルクリニック エクラ院長 小出貴照

愛知県日進市にある歯医者「歯科オーラルクリニック エクラ」では、患者の皆様に安心・安全な歯科医療を提供するため、充実した設備と専門医による治療を行っています。当クリニックでは、院長の小出を含む経験豊富なスタッフが皆様の治療を担当しており、各分野の専門医が在籍しています。また、最新の医療技術を導入することで、難しい症例にも効果的に対応することが可能です。 当院は他の医療機関とも連携をとりながら運営しており、持病のある方にも配慮し、慎重かつ万全な治療を提供しています。患者の皆様が安心して通院いただけるよう、スタッフ一同心をこめてお手伝いさせていただきます。

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