CAD/CAM治療で「銀歯」から「メタルフリー」へ
これまで、虫歯治療で歯を削ったあとに入れる詰め物や被せ物といえば、保険診療では「銀歯」をイメージされる方が多かったのではないでしょうか。
奥歯に銀色の詰め物が入っている。
笑ったときに銀歯が見える。
口を開けたときに金属の色が気になる。
このようなお悩みは、決して珍しいものではありません。
しかし近年、歯科医療ではメタルフリー治療が大きく進んでいます。メタルフリーとは、金属を使わず、白い材料で歯を修復する治療のことです。
そして2026年6月から、保険診療におけるCAD/CAM治療の選択肢がさらに広がりました。
CAD/CAMとは、コンピューターで歯の形を設計し、専用の機械で白いブロックを削り出して、詰め物や被せ物を作る方法です。
つまり、以前よりも多くのケースで、保険診療でも銀色ではなく白い歯を選べる可能性が広がったということです。
これは、患者さんにとってとても大きなメリットです。

CAD/CAMとは?
CAD/CAMは、
CAD:コンピューターで設計する技術
CAM:機械で削り出して作る技術
を組み合わせた歯科治療です。
従来の銀歯は、金属を溶かして鋳造する方法で作られることが一般的でした。一方、CAD/CAMでは、歯科用の白いブロックを機械で精密に削り出して、歯の形に合わせた詰め物や被せ物を作ります。
保険診療で使われるCAD/CAM材料は、一般的にはハイブリッドレジンと呼ばれる白い材料です。
ハイブリッドレジンとは、簡単にいうと、
プラスチック系の樹脂にセラミックの粒子を混ぜた材料
です。
見た目は白く、金属を使用しないため、従来の銀歯に比べて自然な印象になりやすいのが特徴です。
保険で白い歯が入れられるメリット
CAD/CAM治療の一番大きな魅力は、やはり保険診療で白い歯を選べる可能性があることです。
自費診療で白い歯を入れる場合、セラミックやジルコニアなどの素材を選ぶことが多く、費用は高くなります。
一方、保険のCAD/CAMで対応できるケースであれば、患者さんの経済的な負担を抑えながら、銀色ではなく白い詰め物・被せ物を選ぶことができます。
特に、口を開けたときに見えやすい小臼歯や、笑ったときに気になる部位では、銀歯ではなく白い歯になることで、見た目の印象が大きく変わります。
メタルフリーの安心感
CAD/CAMのもうひとつの大きなメリットは、金属を使わないことです。
銀歯は長年にわたり保険診療で使われてきた信頼性のある材料ですが、金属を使用する以上、金属アレルギーや金属イオンの溶出、歯ぐきの黒ずみなどが気になる方もいらっしゃいます。
もちろん、すべての銀歯が悪いわけではありません。銀歯には銀歯の強さと実績があります。
しかし、近年は「できれば口の中に金属を入れたくない」「体にやさしい素材を選びたい」「将来的な金属アレルギーが心配」という方も増えています。
CAD/CAMは金属を使用しないため、そうした方にとっては安心しやすい選択肢のひとつです。

見た目が自然で、口元の印象が明るくなる
銀歯は、強度という面では優れていますが、見た目ではどうしても目立ちます。
特に下の奥歯は、会話や笑顔のときに意外と見えやすい部位です。ご本人は気づいていなくても、写真を撮ったときや人と話しているときに、銀色の詰め物が目立ってしまうことがあります。
CAD/CAMは白い材料で作るため、銀歯に比べて口元になじみやすく、自然な印象になります。
「口を開けて笑いやすくなった」
「銀歯が見えなくなってうれしい」
「もっと早く白い歯にすればよかった」
このようなお声をいただくこともあります。
歯の治療は、単に噛めるようにするだけではありません。見た目の満足感や、笑顔に対する自信にもつながります。

ただし、CAD/CAMには欠点もあります
ここまでCAD/CAMの良い面をお伝えしてきましたが、CAD/CAMは万能な材料ではありません。
特に知っておいていただきたいのは、保険診療で使われるCAD/CAM材料は、基本的にプラスチック系の性質を持つ材料だということです。
正確には、レジンという樹脂にセラミックの粒子を混ぜたハイブリッド素材ですが、ジルコニアや金属のような硬さ・強度とは異なります。
そのため、部位や噛み合わせによっては、次のような欠点があります。
欠点1:割れることがある
CAD/CAMは白くてきれいな反面、強い力がかかると割れることがあります。
特に、歯ぎしり・食いしばりが強い方、噛む力が強い方、奥歯で硬いものをよく噛む方は注意が必要です。
銀歯は金属なので、通常の使用で被せ物自体が割れることはほとんどありません。これに対してCAD/CAMは、素材の性質上、欠けたり、割れたりするリスクがあります。
もちろん、すべてのCAD/CAMがすぐに割れるわけではありません。適切な部位に、適切な厚みを確保し、噛み合わせをきちんと調整すれば、十分に使用できるケースも多くあります。
ただし、強度だけで比較すると、銀歯やジルコニアの方が有利です。
欠点2:すり減ることがある
CAD/CAMは、金属と比べるとすり減りやすい素材です。
銀歯は非常に硬く、長期間使用しても大きくすり減ることはあまりありません。金属の被せ物は、素材そのものが割れたり、すり減ったりしにくいという点では優れています。
一方、CAD/CAMはプラスチック系の素材を含むため、長く使っていると噛む面が少しずつ摩耗することがあります。
噛み合わせが強い方の場合、時間の経過とともに高さが変わったり、表面がすり減ったりすることがあります。
そのため、CAD/CAMを入れた後も、定期的なチェックが大切です。
欠点3:変色・ツヤの低下が起こることがある
CAD/CAMは白い材料ですが、セラミックやジルコニアと比べると、長期間の使用で色調が変化したり、表面のツヤが落ちたりすることがあります。
コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレー、喫煙習慣などがある方は、着色が目立ちやすくなる場合もあります。
最初は白くきれいでも、年数が経つにつれて少しずつくすんでくることがあります。
見た目の美しさを長く保ちたい場合は、保険のCAD/CAMだけでなく、自費診療のセラミックやジルコニアも選択肢に入ります。
欠点4:外れることがある
CAD/CAMは、金属と比べて接着の管理がとても重要です。
歯の形、残っている歯の量、噛み合わせ、唾液の影響、接着操作などによっては、外れるリスクがあります。
特に歯の高さが低い場合や、噛む力が強い場合、被せ物を維持する力が弱くなることがあります。
CAD/CAM治療を長持ちさせるためには、単に白い材料を入れるだけではなく、歯の状態や噛み合わせを丁寧に診断することが大切です。
銀歯とCAD/CAMの比較
銀歯とCAD/CAMは、どちらが絶対に良い・悪いというものではありません。
それぞれにメリットとデメリットがあります。
銀歯のメリット
銀歯の一番のメリットは、強度が高いことです。
金属でできているため、被せ物自体が割れることはほとんどありません。また、強い噛み合わせにも耐えやすく、すり減りにくいという特徴があります。
奥歯でしっかり噛む必要がある場合や、噛む力が非常に強い方では、銀歯の強度がメリットになることもあります。
銀歯のデメリット
一方で、銀歯は見た目が目立ちます。
また、金属を使用するため、金属アレルギーの心配がある方には向かない場合があります。時間の経過とともに、歯や歯ぐきが黒っぽく見えることもあります。
さらに、金属は歯よりも硬いため、噛み合わせの状態によっては、反対側の歯に負担がかかることもあります。
CAD/CAMのメリット
CAD/CAMのメリットは、白くて見た目が自然なこと、金属を使用しないこと、そして保険診療で対応できるケースがあることです。
「銀歯を白くしたい」
「金属を使いたくない」
「費用を抑えて白い歯にしたい」
このような方には、とても魅力的な選択肢です。
CAD/CAMのデメリット
ただし、CAD/CAMは銀歯に比べて、割れる・欠ける・すり減る・変色する可能性があります。
特に奥歯や噛み合わせが強い方では、慎重な判断が必要です。
つまり、CAD/CAMは
見た目とメタルフリーのメリットが大きい一方で、強度や耐久性では銀歯に劣る部分がある
ということです。
「白い歯にしたい」なら、ジルコニアという選択肢もあります
CAD/CAMは保険で白い歯を選べる可能性がある、とても良い治療です。
しかし、より強度や美しさ、長期的な安定性を求める場合には、ジルコニアという自費診療の選択肢もあります。
ジルコニアは、人工ダイヤモンドにも使われる非常に硬いセラミック系の材料です。
近年の歯科治療では、奥歯の被せ物やブリッジ、インプラントの上部構造などにも広く使われています。

CAD/CAMとジルコニアの違い
CAD/CAMとジルコニアは、どちらも白い歯を作る材料ですが、性質は大きく異なります。
CAD/CAMは、保険診療で使用できるケースがあり、費用を抑えやすいことが大きなメリットです。ただし、プラスチック系の性質があるため、強度や耐久性、変色の面では限界があります。
一方、ジルコニアは自費診療になりますが、非常に硬く、割れにくく、すり減りにくい素材です。変色もしにくく、長期的に白さを保ちやすいという特徴があります。
奥歯のように強い力がかかる部位では、ジルコニアが適しているケースも多くあります。
ジルコニアのメリット
ジルコニアのメリットは、まず強度が非常に高いことです。
CAD/CAMでは割れや欠けが心配な部位でも、ジルコニアであれば安心して使いやすいケースがあります。
また、金属を使用しないため、メタルフリー治療としても優れています。銀歯のように金属色が見えることがなく、歯ぐきが黒ずむ心配も少なくなります。
さらに、変色しにくく、表面がなめらかなため、汚れがつきにくいというメリットもあります。
見た目、強度、清掃性、長期安定性を重視する方には、ジルコニアは非常に良い選択肢です。
ジルコニアのデメリット
一方で、ジルコニアにもデメリットがあります。
まず、保険診療ではなく自費診療になるため、CAD/CAMに比べて費用が高くなります。
また、非常に硬い素材のため、噛み合わせの調整が重要です。調整が不十分な場合、反対側の歯に負担がかかることがあります。
さらに、前歯のように透明感や繊細な色調が求められる部位では、ジルコニア単体では天然歯のような自然さを出しにくい場合があります。そのため、部位によってはセラミックを組み合わせるなど、審美性を高める方法を選ぶこともあります。
まとめ:保険で白い歯を選べる時代へ。ただし素材選びは慎重に
2026年6月から、保険診療でのCAD/CAM治療の選択肢がさらに広がりました。
これにより、これまで銀歯になりやすかった部位でも、条件が合えば、保険診療で白い歯を選べる可能性があります。
CAD/CAMは、
白い歯にできる
金属を使わない
保険診療で費用を抑えやすい
という大きなメリットがあります。
一方で、保険のCAD/CAMはプラスチック系の性質を持つため、
割れることがある
すり減ることがある
変色することがある
強い噛み合わせには注意が必要
という欠点もあります。
銀歯は見た目や金属の問題はありますが、強度が高く、割れにくく、すり減りにくいという大きなメリットがあります。
また、より美しさや強度、長期的な安定性を重視する方には、ジルコニアという選択肢もあります。
大切なのは、
保険だから良い・自費だから良い
という単純な判断ではなく、患者さん一人ひとりの歯の状態、噛み合わせ、見た目の希望、ライフスタイルに合わせて、最適な材料を選ぶことです。
銀歯を白くしたい方、金属を使わない治療に興味がある方、CAD/CAMとジルコニアの違いを知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
あなたのお口の状態に合わせて、保険診療と自費診療の両方から、無理のない最適な治療方法をご提案いたします。
