口の中の歯周病菌が血液に乗って移動し、カラダ全体に悪影響を与えていることがわかってきました。
歯周病菌のひとつであるPg菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)は、認知症の原因となる、ベータアミロイドとの関わりが深いことも明らかになっています。
口腔ケアをしっかりと行うことで、認知症をはじめとする全身の病気を予防する意識を高めていきましょう!
歯周病と認知症の関係
認知症と歯周病には関連があるとされています。
歯周病は、歯肉の炎症や細菌感染によって引き起こされる口腔疾患であり、認知症は神経変性疾患の一種です。
近年の研究により、歯周病菌が原因となり、認知症の原因物質が脳に蓄積する速度を速めることが明らかになりました。
歯周病の治療や予防によって、認知症の発症や進行を遅らせる可能性があります。歯周病菌はアルツハイマー型認知症だけでなく、糖尿病や誤嚥性肺炎を引き起こすリスクもあることが分かっています。
毎日の正確な歯のブラッシングと定期的な歯科検診によって、認知症の予防に努めていきましょう!
歯周病と認知症には以下のような関係があるとされています
- 歯周病の治療や予防で、認知症の発症や進行を遅らせることができる可能性がある。
- 歯周病菌はアルツハイマー型認知症だけでなく、糖尿病や誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがある。
- 歯周病は悪化すると最終的には歯を失ってしまい、咀嚼機能(噛む力)が低下すると考えられ、咀嚼による脳への刺激が少なくなり認知症のリスクが上がる。
- 歯周病菌によってカテプシンBという酵素が増え、アルツハイマー型認知症の発症因子である「アミロイドβ」の受容体(受け皿)が増えることによって、認知症の発症・症状悪化を招くことが明らかとなった。
- 歯周病や歯の欠損、柔らかいものをよく食べる食生活が、認知症のリスクを高める可能性がある。
歯周病セルフチェック
あなたは大丈夫?歯周病セルフチェック
歯周病かどうか、セルフチェックをして確認してみましょう。
- 歯ぐきに赤く腫れている部分がある
- 歯磨きをすると血が出る
- 歯ぐきに触ると痛いところがある
- 歯が長くなったように見える
- かむと歯が揺れる感じがある
- 歯と歯の間がすいてきた
- 口のにおいが気になる
4つ以上当てはまる方は、歯周病が進行している可能性が高いです。しかし、この中には、1つでも当てはまると、注意が必要な項目があります。
「歯が長くなったように見える」「かむと歯が揺れる感じがある」「歯と歯の間がすいてきた」
この3つのうち、1つでも当てはまるという人は、早めに歯科医院を受診した方がいいと思います。
歯周病の原因
歯周病の原因はプラーク(歯垢)の中に潜んでいる歯周病菌です。
この歯周病菌が歯と歯肉の間の境目から歯肉の中に侵入しようとして悪さを始めます。症状としては、歯肉が赤く腫れてきます。これが歯周病の始まりです。
さらにプラークが歯肉の境目から侵入すると、その境目も深くなりますし炎症による歯肉の腫れが大きくなります。
悪化すると、歯を支える歯槽骨が溶けて、歯の支えが失われてしまい、そのまま放置すると歯が抜けてしまいます。
歯を支える骨が溶けることで、セルフチェックにあるような、歯肉が下がって「歯が長くなったように見える」、「歯が揺れる感じがある」、「歯と歯の間がすいてきた」といった症状が現れます。
アルツハイマー型認知症と歯周病の関係
アルツハイマー型認知症は、脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、脳の萎縮がおこる病気です。
アルツハイマー型認知症と歯周病の関係について研究しているのは、九州大学大学院、武 洲(たけ ひろ)准教授の研究チームです。
マウスの研究ですが、人の中年、40代~50代ぐらいに当たるマウスに、歯周病菌を3週間連続で投与した結果、マウスの脳内にあるアルツハイマー型認知症のような病態を引き起こす異常なたんぱく質のアミロイドβが10倍に増え、記憶力が低下しました。
本来は、免疫細胞が歯周病菌を攻撃し減滅させて、体を守りますが、たくさんの歯周病菌がいると、免疫細胞がそれを過剰に攻撃し、炎症が起こります。
その炎症物質が、免疫細胞自身を刺激して異常なタンパク質のアミロイドβを作り出すことがわかりました。
また、若いマウスでは少なく、中年のマウスでは多いことが判明しました。
歯周病菌が原因で発生するアミロイドβは、脳内でも作られますが、歯周病菌は、全身に巡ることから、脳以外でも多く作られているのではないかと考えられるようになりました。
通常、脳は不要な物質が侵入しないように、血液脳関門と呼ばれるフィルターのような構造があると考えられてきました。
これにより、体内で生成されたアミロイドβが脳に到達することはないとされていました。
しかし、最近の研究から、脳の血管内皮細胞にはアミロイドβを脳に取り込む大型の受容体が存在し、歯周病菌がこの受容体を増加させ、アミロイドβを脳内に導入することが判明しました。
つまり、全身に広がった歯周病菌が、脳以外の部分でもアミロイドβを作り出し、それが、血液に乗って、脳内に取り込まれるということです。脳内にアミロイドβがたまると、記憶障害などを引き起こし、アルツハイマー型認知症の発症につながる可能性があります。
※現在は、マウスでの実験ですが、人間の体の中でもこのようなことが起きているかもしれません。
認知症にはさまざまな要因が考えられますが、その1つの要因として歯周病も関係していると考えられます。アルツハイマー型認知症だけでなくそのほかの全身疾患を予防するためにも歯周病を治療・予防することは、非常に重要になります。
引用:NHK
歯周病菌が引き起こす「アミロイドβ」の蓄積量が10倍に増加
歯周病菌によってカテプシンBという酵素が増え、アルツハイマー型認知症の発症因子である「アミロイドβ」の受容体(受け皿)が増えることによって、認知症の発症・症状悪化を招くことが、九州大学や北京理工大(中国)などの研究チームによって明らかとなりました。
歯周病菌が引き起こす影響について、九州大学や北京理工大(中国)の研究チームが明らかにしました。
歯周病菌は、酵素であるカテプシンBの増加を促し、これが「アミロイドβ」の受容体の増加を引き起こします。
この影響により、アルツハイマー型認知症の発症因子が増え、認知症の発症や症状の悪化が招かれることがわかりました。
研究では、3週間に渡って歯周病菌を直接投与したマウスと正常なマウスの脳血管や脳細胞に蓄積されたアミロイドβの量を比較しました。
投与によって歯周病に感染したマウスには、次のような変化が表れたほか、記憶実験により記憶力が低下していることが確認されました。
アミロイドβを脳内に運ぶ「受容体」が脳血管の表面で約2倍に増加
脳細胞のアミロイドβ蓄積量が10倍に増加
今回の研究では、歯周病菌が全身に広がり、それが受容体カテプシンBの増加に繋がり、結果としてアミロイドβが生成・蓄積されるメカニズムがはっきりと明らかにされました。
ホームケアとプロケアの重要性について
むし歯や歯周病の予防には、歯磨きが非常に重要ですが、果たしてその歯磨きが本当に効果的なのでしょうか。
「磨いている」と思っているだけではありませんか。むし歯や歯周病の原因となる歯垢をしっかりと除去することが予防の鍵です。
歯ブラシ1本では歯磨きは完璧!?
歯ブラシ1本だけでは、どうしても磨き残しがあります。
歯ブラシだけでは歯垢の約6割しか取り除けないと言われています。これは、歯の隙間に食べカスがたまりやすく、歯ブラシだけでは細かい部分まできちんとケアできないからです。
歯ブラシとデンタルフロスを組み合わせると、約8割まで除去でき、歯間ブラシを使うと8割5分まで効果的です。歯ブラシでのブラッシングを基本に、定期的に歯間ブラシやデンタルフロスを使った歯間ケアを行うことがオススメです。
デンタルフロスや歯間ブラシを歯磨きに加えることで、歯の間や歯と歯の隙間に蓄積した歯垢や食物のカスを効果的に取り除くことができます。歯ブラシだけでは届きにくい部分をきれいに保つことができます。
歯の隙間についた汚れは、普段の歯磨きでは落としきれないことがよくあります。表面だけでなく見えない部分の汚れも取り除いていきましょう。そのためにも自宅での歯間ケアも定期的に行うことが大切です。
歯ブラシだけでは歯垢の約6割しか取り除けない。
歯ブラシに加えてデンタルフロスを使うことで、その除去率が80%まで向上するとされています。
歯の表面をみがくだけでなく、歯と歯ぐきの間のケアも大切です。
歯間ブラシや、デンタルフロスを用いて、力をかけず丁寧に、歯と歯の間の汚れを落としてください
デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで、歯の表面や歯と歯の間の汚れをより徹底的に取り除くことができ、口腔内の清潔を保つのに役立ちます。
歯の隙間の汚れ
歯の隙間の汚れは、普段の歯磨きではなかなか落としきれません。残ったままの汚れは歯垢に変わり、時間がたつと歯石になり、一層落としにくくなります。
歯石は虫歯や歯周病の原因にもなりかねません。歯のクリーニングは、歯科専用の器具を使って頑固な歯の汚れを取り除き、歯茎の中まで丁寧にケアします。
着色汚れやヤニも除去し、最後に電動ブラシと研磨剤を使用して歯の表面や隙間を磨きます。これが歯のクリーニングの一般的な流れです。
定期的に歯科医院でメンテナンス
プロのメンテナンスを受けることで更に予防率があがります。
約80%のプラークがうまく除去できても、どうしてもとりきれない細かなすき間の汚れや歯石、バイオフィルムは付着したままです。
一度付着してしまうと、歯ブラシでは落としきれません。落としきれない汚れを放置しておくと、むし歯や歯周病のリスクが高くなりますので、歯科医院で専用の器具を使用して除去してもらうことが必要です。
プラーク除去率残りの20%を歯科医院のプロケアで除去していきましょう。
バイオフィルムの形成は約100日周期だといわれています。歯石の付着しやすさには個人差はありますが、毎月〜3カ月に1回のメンテナンスがオススメです。
家でのしっかりとした「ホームケア」と歯科医院での「プロケア」両輪をバランスよく行うことが、むし歯と歯周病予防に大きくつながります。
歯科オーラルクリニックエクラでは、患者様のお口の状態に合わせた、最適なケアの方法を指導しています。
いつまでも、健口でいるために、一緒に健康管理に取り組んでいきましょう。