皆さんは、吹奏楽などをやられたご経験はありますでしょうか?
私はサックスを習っているのですが、この前先生に「口から息を取り込むことができなくなっているね」と言われてしまいました。
楽器を吹く時、音を長く出すためには鼻だけではなく口からも息を吸って空気を取り込まないといけないそうなのですが、私は普段の生活で鼻から呼吸することに重きを置いていたことで、意識しないと口から息をすることが出来なくなっていたようです。
というわけで、何週にもわたってお伝えしているように、普段からの呼吸は断然鼻呼吸であることが重要です!
サックスを吹くときは例外かもしれませんが、歯科クリニックの立場で申し上げると、口で呼吸をすることで口の中が乾燥し唾液が少なくなり「歯周病」や「むし歯」にもなりやすくなります。
歯科検診の時も患者さんには常に鼻で呼吸することをお願いしています。口で呼吸されると歯を削る機械の水や唾液が喉に入り、呼吸が出来ないので苦しく、長い治療が出来なくなるのです。
患者さんの中にはなかなか鼻で呼吸することができない人もいて、まずは口を閉じることから練習してもらったりしています。
こんなに口で呼吸をするのは良くないことであるとされているのに、私たちは鼻で呼吸することに慣れていません。
では、人間以外の他の動物はどうなのでしょうか?
哺乳類の中で口で呼吸ができるのは人間だけ
最近読んだ本の中に、『ざんねんないきもの辞典:今泉忠明監修(高橋書店発行)』があります。
その本によると、なんと口呼吸ができるのはほ乳類のなかでも人間だけなんだそうです。
犬は舌を出してハァハァしていたりしますがあれは体温調節の一環に過ぎないそうです。
犬の鼻から吸った息の一部は肺に達しますが、吸った息のほとんどは喉を通ってそのまま口から出ているそうです。人間のように口から深く息を取り入れることはできないようです。
口呼吸は、冷たく乾いた異物だらけの空気が直接、咽頭や喉頭に当たってしまい、口内は乾燥し、病原体が繁殖しやすい状態になります。つまり、病原菌などの外敵に対して非常に無防備な呼吸法なのです。
口呼吸をしていても日常生活の上で何の支障もない-と考えがちですが、口呼吸の習慣を続けることで、呼吸器系疾患やアレルギー性疾患、皮膚疾患、自己免疫性疾患、精神性疾患などに罹るリスクを高めていることを認識することが大切です。
鼻と口、どちらがたくさん酸素を取り入れられるか
人間はおよそ4秒に1回の割り合いで呼吸しています。1回分の呼吸の量はおよそ500ミリリットルです。つまり、1分間におよそペットボトル15本分を吸って、15本分を吐き出していることになります。
1時間では900本分。一日にすると、ペットボトル20000本分を吸って、20000本分を吐いている計算になります。
運動をすると呼吸の回数は普段の5倍くらいに増えます。睡眠の間の呼吸回数は普段の半分、1分間に8回くらいです。
鼻呼吸は口呼吸に比べ、 気道抵抗が50%大きくなり呼吸量が減ります。
その為、排出される二酸化炭素も減り、血中二酸化炭素が適正量に保たれ、 細胞への酸素放出量が20%増えます。
さらに静かで深い鼻呼吸をすることにより、副鼻腔粘膜より分泌される一酸化窒素(気道と血管の拡張作用あり) を有効活用できるので、 更なる健康が約束されます。
コロナウイルス感染症のもたらした影響
人間が発症する病気の7割は口呼吸が原因とも言われています。
新型コロナウイルスもその一つです。
新型コロナウイルスよる肺炎が重症化している方の多くは、ウイルス性肺炎と口内細菌に由来する細菌性肺炎を二重に引き起こしているといわれています。
新型コロナウイルスによるウイルス性肺炎を起こすと、鼻詰まりなどで鼻からの呼吸がしにくく、必然的に口から息を吸い込まなければならなくなってしまう状態に陥ります。
ひどい場合ですと医療機関などで人工呼吸器を装着しなければならないことがあります。人工呼吸器をつけると、口内細菌が肺に流れ込みやすくなりその他の合併症の発症も回避できない状況に陥る場合もあります。
日ごろからきちんと口腔ケアをしておくことで、このような事態を回避できますが、毎日の歯磨きだけでは仕上がりに限界があります。そこで大いに関わってくるのが「口を閉じる」ということです。
普段から鼻から息をする、口を閉じるという所作を癖づけておくのです。その上で歯磨きなど口腔内を清潔にしておくことも怠らなければ、口腔内の細菌が体内に侵入し猛威を振るうのを防ぐことができます。
前回の記事でもご紹介したあいうべ体操は、舌の位置を改善し、無理なく口が閉じられるように口内を鍛えることができます。そうすることで自然と口呼吸から鼻呼吸へと改善していくことができます。
あいうべ体操をしっかり継続している人は、普段から自然に鼻で呼吸ができるようになり、アレルギー性疾患等の発症を防ぐことができるのです。新型コロナウイルスにも同じことが言えると思います。
さらにより良い口内状態を保つためには、定期的な口腔ケアを受けたり、歯周病治療を継続したりするなど、口内細菌数を減らす努力をすることも大切です。舌の清掃も重要です。
適切な口腔ケアがなされずしっかり噛めないと、低栄養からウイルスに感染しやすくなり、死亡率が高まるリスクがあります。そのため、口の健康に問題のある方は、しっかりと噛める状態を維持するためにも、口の病気を放置せず、口腔ケアをきちんと受けることが大切です。
口の問題を抱えておられる方、歯周病治療に取り組まれている方などは、放置せず歯科クリニックにご相談いただきたいと思います。
マウスとカメの寿命はどちらが長い?
カメは非常に長生きする動物であることが知られています。
南太平洋のセントヘレナ島で飼育されている「ジョナサン」というゾウガメは、2020年に190歳の誕生日を迎えました。「カメは老化速度が著しく遅く、年齢を重ねても死亡率が上がらない」という研究結果も出ているほどです。
そこには『呼吸の深さ』が関係しているそうです。
一度空気を吸い込むと数分間は息をしなくても大丈夫なほど、深い呼吸をするカメはネズミと比べてももちろん人と比べても寿命が長いです。
もちろんこの呼吸は鼻で吸った呼吸であり、たくさんの酸素を含んだ息なのです。
カメや他の動物たちを見習って、鼻からたくさん息を吸って、健康的な生活を送りましょう。
日進市の「歯科オーラルクリニック エクラ」は、鼻呼吸のプロフェッショナルを意味する、「息育(そくいく)指導士」の資格を保持しています。唾液の分泌にお悩みの方や、口腔内の乾燥が気になった方、呼吸の仕方に関して少しでも違和感がある方のお悩みにもしっかりお応えいたします。
口呼吸を脱却し、鼻呼吸を定着させたい方、あいうべ体操のやり方を知りたい方も、是非お気軽にご相談ください。