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2024年(令和6年)6月から保険適用で「奥歯の白い被せ物・詰め物」適応範囲がさらに!広がりました。

以前の記事で、2023年12月1日から、新しい種類の歯の材料についてのルールがはじまり、すべての歯に白い歯の被せ物が適応になりましたとお伝えしました。

その名前は「CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)※」です。このルールのおかげで、「PEEK」という特別なプラスチックで作った奥歯の白いかぶせものが、保険で治療できるようになりました。

ルールの改正で、PEEKで作った白いかぶせものを使って奥歯を治すとき、保険が適応されお金の負担が少なくなります。
以前の記事はこちら

※「CAD/CAM冠用材料」とは、歯のかぶせものや詰め物を作るために使う特別な材料のことです。「PEEK」とは、丈夫で安全なプラスチックの一種です。

なんと、2024年(令和6年)6月から保険適用で「奥歯の白い被せ物」の適応範囲がさらに広がります。

詳しく説明していきます。2024年6月から、保険の白い被せ物(CAD/CAM冠)の適応条件が一部緩和されます。下記の説明資料をご覧ください。

※2024年3月4日、厚生労働省より令和6年度診療報酬改定の説明資料

上記の図だけではわかりにくいので、補足します。

今までは、歯の一番奥の上下左右の「第2大臼歯」という歯があるときだけ、「第1大臼歯」というもう少し手前にある歯に特別なかぶせもの(CAD/CAM冠)をつけることができました。このかぶせものは、歯を守るためや、噛みやすくするために使います。

今回のルール変更で、ある条件が整っていれば、「第2大臼歯」にもこの特別なかぶせものをつけることができるようになりました。

条件とは、次のようなものです

  1. かぶせものをつける歯の反対側にも、しっかりと支えとなる歯があること。
  2. かぶせものに強い力がかかりすぎないこと。

もっと具体的にいうと、次の2つのうち、どちらかが必要です。

  • かぶせものをつける側(同じ側)に他の大臼歯がしっかりしている。
  • かぶせものの上にくる(噛み合う相手)歯が義歯(人工の歯)か、そもそも歯がないけど、かぶせものの手前までは自分の歯がある状態。

エンドクラウンの大臼歯CAD/CAM冠も新規導入

エンドクラウンとは、特に大きく損傷した奥歯を修復するための特別な冠(かんむり)のことです。既存のCAD/CAM冠では、歯の高さがない場合は維持が不足して脱離しやすいという欠点がありました。

通常の冠とは異なり、歯の大部分が残っていない場合に適しています。

例えば、お料理でいうと、カップケーキのトップがほとんどなくなってしまった状態を想像してみてください。この状態で通常の小さなトップをのせただけでは、うまくカバーできません。エンドクラウンは歯の高さがない場合でも脱離しにくい形態です。

歯の内部にしっかりとフィットし、元の形にぴったり合わせて固定することができるので、再びしっかりと食べ物を噛むことができるようになります。

このエンドクラウンはCAD/CAM技術を使用して製作されるため、精密にあなたの歯に合わせて作ることが可能です。これにより、自然な見た目と機能を取り戻すことができるのです。

CAD/CAM冠用材料Ⅴ(以下、PEEK冠)について

PEEK冠とは

 

PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、高性能な熱可塑性ポリマー材料で、その優れた生物学的な適合性、耐摩耗性、耐化学薬品性、および優れた機械的特性から、医療分野、特に歯科での使用が注目されています。

PEEK冠はCAD/CAM(コンピューター支援設計・コンピューター支援製造)技術を利用して製作されるため、精密で個別カスタマイズが可能です。

メリット

  1. 生物学的な適合性と快適さ: PEEKは非常に生体適合性が高い材料であり、アレルギー反応のリスクが非常に低いです。また、軽量であり、患者さんにとっては金属冠に比べて違和感が少なく、長時間の使用でも快適です。
  2. 耐久性と柔軟性: PEEKはその柔軟性に優れており、咬合力による衝撃を吸収しやすいため、自然な歯と同様の感覚で使用できます。これにより、周囲の歯に対する負担が少なくなります。
  3. 美観: PEEK冠は天然の歯の色に近い材料であり、見た目が自然で、審美的にも優れています。これは特に前歯や目立つ部分の修復において重要な利点です。
  4. 耐化学薬品性: PEEKはさまざまな化学薬品に対して非常に強い耐性を持っているため、食事や口内環境の変化による劣化が少ないです。

デメリット

  1. 変色の可能性: 一部のCAD/CAM冠用材料は変色する可能性があり、特に飲食物の色素による着色が問題となることがあります。
  2. 割れやすさ: CAD/CAM冠は、特に硬い材料を使用した場合、過度の圧力や衝撃によって割れたり、破損したりするリスクがあります。
  3. 技術依存性: 高度な技術を要するため、操作に熟練した技術者や特定の設備が必要であり、その不足は品質に影響を及ぼす可能性があります。
  4. 修復の困難さ: CAD/CAM冠が損傷した場合、修復が困難であるか、場合によっては新しい冠を製作する必要があることがあります。
  5. 審美的制限: 一部のCAD/CAM材料は自然な歯の見た目を完全に模倣するのが難しい場合があり、特に透明感や自然な色の再現が課題となることがあります。

事例

ある中年の患者さんが、金属アレルギーのために従来の金属冠を使用できない状況でした。そのため、PEEK冠を選択しました。装着後、患者さんは金属冠時に経験していたアレルギー反応(発疹や口内炎)がなく、非常に満足しています。さらに、PEEKの自然な色合いが審美的な見た目を改善したたことから、社会生活においても自信を持って笑顔を見せることができるようになりました。

PEEK冠のまとめ

PEEK冠はその独特の特性から、特定の患者さんにとっては非常に有益な選択肢となり得ます。特に金属アレルギーのある患者さま、審美的な懸念を持つ患者さま、または自然な歯のような感覚を求める患者さんにとって、PEEK冠は大きな利点をもたらします。しかし、これらの利点を享受するためには、高い初期投資と技術的な課題を克服する必要があります。

最終的に、PEEK冠の採用は患者さまの具体的なニーズや状況、そして診療所の資源や技術力によって決定されるべきです。歯科医師としては、利用可能な最新の情報に基づいて患者さんに適切な選択肢を提供し、それぞれのケースに最適な解決策をご提案させていただきます。

2024年(令和6年)より保険適用される「奥歯の白い被せ物・詰め物」についてのまとめ

すべての歯にCAD/CAM冠が保険適用に

2023年12月1日の保険改定に伴い、「CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)」という新カテゴリーが導入されました。今回の改定で新たに保険適用が認められた「CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)」は、大臼歯専用です。

この新しいカテゴリーは、以前の「CAD/CAM冠用材料(Ⅲ)」と比べて強度が高く、すべての大臼歯に適用可能です。これにより、すべての歯に対して(第二大臼歯の有無や咬合の状態、金属アレルギーの有無などを問わず)、保険を使ってCAD/CAM冠を施すことができるようになりました。

新しい保険改定で対象となったのは奥歯

保険でカバーされる白い被せ物、つまりCAD/CAM冠はこれまで、前歯から第二小臼歯(中央から数えて1~5番目の歯)に無条件で適用されていました。

第一大臼歯と第二大臼歯(6番目と7番目の歯)の場合、特定の条件下でのみ保険が適用されていました。

具体的には、第一大臼歯は上下左右の第二大臼歯が残っており、過度な咬合圧がかからない状態であることが条件です。

一方、第二大臼歯は金属アレルギーの方が対象で、この場合は医師の診断が必要です。しかし、2023年12月の保険改定により、これらの条件が撤廃され、すべての奥歯にCAD/CAM冠が保険適用されるようになりました。

そして、2024年6月からさらに保険適用範囲が拡大

下記の二点が大きな追加内容です。

1.CAD/CAM冠用材料(Ⅲ)の適応範囲が拡大

2.エンドクラウンの保険適用

CAD/CAM冠用材料(Ⅲ)の適応範囲が拡大

これまでCAD/CAM冠用材料(Ⅲ)は、金属アレルギーを有する患者を除き第一大臼歯までが適応範囲とされてきましたが、2024年6月から適応範囲が拡大されます。

エンドクラウンの保険適用

既存のCAD/CAM冠は、歯の高さが不足している場合に脱離しやすいという問題がありました。

しかし、今回導入されたエンドクラウンは、歯の高さがない場合でもしっかりと固定され、脱離しにくい設計になっています。

エンドクラウンは、歯の神経を取り除いた歯に適用する治療方法です。そのため、歯の神経が残っている場合にはこの処置を行うことはできません。

今回の保険適用で、被せ物の白い歯は、全面解禁となりませんでしたが、選択肢が増えました。また、詰め物(CAD/CAMインレー)の適応範囲も拡大しました。

CAD/CAMインレーについて

CAD/CAMインレーは、歯の形をコンピューターで読み取り、設計し、材料のブロックをコンピューター制御の切削機械で加工して作る治療法です。

この先進的な技術は、歯科治療のデジタル化(DX)を推進する一環として保険適用の範囲が拡大しています。

CAD/CAMインレーは、虫歯などで欠けた歯の形を復元するために使われます。

「インレー」とは歯科治療で使用される詰め物の一種です。歯に生じた虫歯や破損が比較的大きい場合に適用され、欠損した部分を補うために作られます。インレーは、歯の損傷が大きく、一般的な充填(詰め物)では対応できないが、クラウン(被せ物)を必要としない程度の修復に用いられることが多いです。

インレーはラボラトリーでカスタムメイドされ、主にセラミック、金属(金や銀など)、または複合樹脂などの材料から作られます。それらは歯の窩洞(かどう、穴)にぴったりと収まるように精密に製作され、接着剤を使って固定されます。この方法により、歯の形状、機能、そして外観が自然に回復します。

CAD/CAMインレーでは、セラミック混合素材を使用し、歯科技工士の手作業に代わってコンピューターで精密に設計・製作されます。これにより、金属アレルギーのある方でも使用可能で、自然な見た目の仕上がりが得られる利点があります。

セラミックインレーと比較して、CAD/CAMインレーはセラミックの約3分の1の硬さを持ち、表面が傷つきやすいですが、セラミックインレーは色調が天然歯により近く、硬度が高いため、見た目が長期間良好に保たれます。

歯型はとらない新時代。最新のスキャナーを用いて型をとる光学印象。

インレー(詰め物)は光学印象で型取り

型取りが苦手な方の体験談には、歯科治療におけるアルジネートを使った型取りに関する苦労話が多く聞かれます。

患者さんの体験談

「歯の治療で初めて型取りを経験した時、使用されたのはアルジネートという柔らかいガムのような素材でした。治療を受ける前には、それほど心配していなかったのですが、実際に口の中に大きな型取り材を入れられると、思いのほか圧迫感が強く感じられました。特に、材料が口の中で固まるまでの2分間が長く感じられ、息がしにくくなるのではないかと不安になりました。

材料が口に入っている間、何度かむせかえるような感覚に襲われ、一時的にパニックになりそうでした。また、材料が固まる過程でわずかながら味や匂いが感じられ、それがさらに不快感を増す原因となりました。

型取りの経験はかなりストレスフルでした。歯科医からは、最新の光学スキャナーを使った型取りがあることを聞き、次回の治療ではそれを希望するつもりです。」

この体験談からもわかるように、従来の型取り方法は一部の患者にとっては大きなストレス源となり得ます。不快感や恐怖を感じる患者にとっては、光学スキャナーを使用した無接触の型取りが適切な代替手段となる可能性があります。

当院では 3D光学スキャナー iTero(アイテロ)を導入しております。

3D光学スキャナー 「iTero(アイテロ)」とは

iTeroの主な特徴と優れている点

  1. 非接触型スキャニング

    • iTeroは口の中に直接材料を入れることなく、高精度な3Dイメージを生成するためのスキャンを行います。このため、従来の型取り材を使用した方法に比べて、患者さんが感じる不快感や息苦しさが大幅に軽減されます。
  2. 高速かつ高精度

    • スキャンは数分で完了し、即座に高精度の3Dイメージを生成します。これにより、治療計画の精度が向上し、フィット感のある詰め物やかぶせ物、矯正装置が作製できます。
  3. 即時のフィードバックと可視化

    • iTeroスキャナーはスキャン結果をリアルタイムでディスプレイに表示するため、歯科医師と患者さんは治療計画やその結果を即座に確認できます。これにより、患者さんは自分の口内状況をよりよく理解し、治療に対する不安を軽減できます。
  4. 治療のシミュレーションが可能

    • iTeroスキャナーは、矯正治療の前後のシミュレーションを表示する機能も持っています。これにより、治療後の予想される外観を患者さんが事前に見ることができ、治療への動機付けや期待管理がしやすくなります。
  5. デジタルデータの活用

    • スキャンによって得られるデジタルデータは、必要に応じて他の医療機関や技工所と簡単に共有できます。これにより、患者の治療データの管理が容易になり、治療の質の向上につながります。

iTeroスキャナーはこれらの特徴を通じて、当院では歯科治療の効率性と快適性を向上させています。特に型取りが苦手な患者さんにとっては、治療への抵抗感を大きく減らすことができます。

医療法人 エクラ会 歯科オーラルクリニック エクラ
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小出貴照

歯科オーラルクリニック エクラ院長 小出貴照

愛知県日進市にある歯医者「歯科オーラルクリニック エクラ」では、患者の皆様に安心・安全な歯科医療を提供するため、充実した設備と専門医による治療を行っています。当クリニックでは、院長の小出を含む経験豊富なスタッフが皆様の治療を担当しており、各分野の専門医が在籍しています。また、最新の医療技術を導入することで、難しい症例にも効果的に対応することが可能です。 当院は他の医療機関とも連携をとりながら運営しており、持病のある方にも配慮し、慎重かつ万全な治療を提供しています。患者の皆様が安心して通院いただけるよう、スタッフ一同心をこめてお手伝いさせていただきます。

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