「口腔機能低下症」をきいたことありますか。
口腔機能低下症とは、日本老年歯科医学会から2016年に発表された新たな疾患概念です。
口腔機能低下症の7つの項目
①口腔不潔
②口腔乾燥
③咬合力低下
④舌口唇運動機能低下
⑤咀嚼機能低下
⑥嚥下機能低下
⑦低舌圧
このうち3つが認められたら口腔機能低下症として、歯科医療従事者が治療をおこなう必要があります。
口腔機能低下症になっている状態にも関わらず治療を行わず、そのまま放置していると、嚥下障害や咀嚼機能不全といった専門的な知識がある歯科医師しか対応できない口腔機能障害になってしまいます。
日本歯科医師会等ではオーラルフレイルの段階で止めておけば歯科にかからなくても済むといった推奨もされています。
高齢になってお口のケアがおろそかになると、う蝕や歯周病になりやすくなります。
それを放置しておくと口腔機能低下症になります。さらに放置すると口腔機能障害になってしまいます。
口腔機能低下症の段階で歯科にかかることが結果、医療費や介護費用の減少にもつながります。
嚥下機能が低下するとどうなのか!?
嚥下機能が低下した「嚥下(えんげ)障害」とは、どういう状態のことを言うのでしょう。
嚥下障害とは食べ物を上手に飲み込めない状態のことをいいます。
ものを食べるということは、食物を口に入れて、噛み、そして飲み込むという動作によって行われます。
ものを飲み込む動作のことを「嚥下(えんげ)」といい、この動作に障害を及ぼしている状態を「嚥下障害」といいます。
いろいろな原因から嚥下障害がおきると、食べることや飲み込むことに困難が生じてしまい、生活の質が下がったり、楽しみだったはずの食事が苦痛になってしまう場合もあります。
正しい嚥下は下記のような流れになります。
引用:厚生労働省「高齢者の口腔と摂食嚥下の機能維持・向上のための取組に関する調査」
嚥下障害の症状
・食事をするとむせる
・固形物を噛んで飲み込みづらい
・食事に時間がかかる
・食べると疲れる
・食後に痰が出る
・食事を摂るとガラガラ声になる
・食べ物が口からこぼれる
・飲み込んでも食物が口の中に残る
・食べ物がのどにつかえる
・食事中や食後にせきが出る。夜にせきが出る
・口の中の汚れが強い
嚥下障害と誤嚥性肺炎
肺炎を引き起こすきっかけとなりうる嚥下障害。高齢者に多い誤嚥性肺炎について理解し、予防と日頃の健康管理に役立てることが大切です。
食べ物を上手く飲み込めないと食事が取りづらくなるだけではなく、「低栄養や脱水を起こす」「食べ物が喉に詰まって窒息する」といった危険があるほか、高齢者の命を脅かす病気「誤嚥性肺炎」を引き起こす原因にもなります。
高齢者に多い誤嚥性肺炎
誤嚥とは、食物や唾液は、口腔から咽頭と食道を経て胃へ送り込まれます。食物などが、なんらかの理由で、誤って喉頭と気管に入ってしまう状態を誤嚥(ごえん)といいます。
その食物や唾液に含まれた細菌が気管から肺に入り込むことで起こるのが誤嚥性肺炎です。
起きているときに気管にものが入ればむせて気づきますが、眠っている間に唾液を少しずつ誤嚥することがあり、これは気づきにくいものです。
誤嚥の治療として、ごく軽度の誤嚥であれば、十分に咀嚼を行う、一口量を少なめにするといった嚥下指導が行われています。
もし、口腔機能低下症と診断されたら・・・
年を取るとお口の状態に問題が生じやすくなります。歯の本数や環境によって、生活が大きく変わってきます。全身の健康のためにも、お口の機能を保ち、元気なお口で、豊かな食事と健やかな生活、楽しい毎日を送りましょう。
1.全身・生活
- かかりつけの歯科医をもってください。
- 栄養のバランスが良い食事をとってください。
- 適度な運動を心がけてください。
- 積極的な社会参加を心がけ、(新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が終息したら)週に一度は外出しましょう。
2.口腔について
①口腔衛生状態の不良
- 歯みがきは1日2回以上、夜、寝る前にもしっかり行ってください。
- 舌の汚れをていねいに清掃しましょう。
- 歯間ブラシ・フロスを1日1回以上は使いましょう。
- うがいをしっかりしましょう。
- 義歯の汚れをしっかり取りましょう。
②口腔の乾燥
- お口をよく動かすようにして、水分摂取やうがいを適切に行いましょう。
- 唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)マッサージを1日3回行いましょう。
- お口の保湿剤を使用しましょう。
③咬合力の低下
- 義歯、う蝕、歯周病などの歯科治療をしっかり受け、嚙み合わせをキチンと治しましょう。
- 干し芋、スルメイカ、ドライフルーツなどの歯ごたえのあるものを食べましょう。
- 嚙み合わせの力が発揮できるように噛む筋力を鍛えましょう。
④舌口唇の運動機能の低下
- 早口言葉や滑舌(かつぜつ)の練習で、舌や唇を素早くしっかり大きく動かしましょう。
- 家族や友達とおしゃべりする機会を増やしましょう。
- 唇や頬の力を鍛える器具や笛などを使いましょう。
⑤低舌圧
- 舌の口の中ではじいて、ポンっと音が鳴らしましょう。
- 舌の筋肉を鍛える顔の運動をしましょう。
- 舌の筋肉を鍛える器具をつかいましょう。
⑥咀嚼機能の低下
- 義歯、う蝕、歯周病などの歯科治療を受けて、咀嚼機能を改善しましょう。
- 咀嚼の訓練や、1口に20~30回噛むなどの食べ方指導を受けましょう。
- 食事形態の指導を受けましょう。
⑦嚥下機能の低下
- 飲み込みの検査を受けましょう。
- 飲み込みの力を鍛えましょう。
- 呼吸の力を鍛えましょう。
口腔機能低下症と診断されたら、お口の機能を保ち、元気なお口で、豊かな食事と健やかな生活、楽しい毎日を送りましょう。
全身の健康は健口からです。