手術やがんの治療の前にお口の健康状態をチェックするのが当たり前の時代に。
医科歯科連携が手術や抗がん剤の治療効果を高めている
医科と歯科の連携治療が成果を上げ始めています。手術や抗がん剤治療の前後に、口の中の清掃などを行う「口腔(こうくう)健康管理」の取り組みが広がり、治療後の合併症や副作用を減少させています。さらには入院日数の減少にも貢献しており、より一層の普及が期待されています。
がんの治療中には抗がん剤の治療では副作用で免疫力が低下し、むし歯や歯周病が悪化しがちです。さらに口内の細菌による感染症によって、がん治療そのものに悪影響が生じることもあります。外科手術においても口の中の細菌によって、手術後の傷の感染や肺炎などの合併症を起こす可能性があります。そのため、治療前後の口腔機能管理が一部の医療機関で導入されるようになりました。それらの結果についてまとめた報告によると、口腔機能管理を行った場合には、手術後の合併症がおよそ4分の1まで減少することが確認されました。また入院日数も胃がんで約10日、その他の疾患でも軒並み減少することがわかりました。
引用:歯科医師会(http://www.jda.or.jp/)
これらの結果を受けて、厚生労働省は2012(平成24)年から周術期口腔機能管理を保険適用して、対象を少しずつ増やしてきました。現在ではのどや舌のがん、手術後に肺炎を起こしやすい食道がんの手術から、脳卒中や人工股関節置換術などの手術に至るまで、対象は多岐に広がっています。また手術のみならず、口内炎の発症率が高い抗がん剤を服用する患者も対象とされています。特に抗がん剤治療では長期的に口腔機能管理が必要とされることが多いため、医科と歯科の連携が今後さらに求められていくと考えられています。
がん手術を受けた患者50万人以上を対象に、歯科医師による口腔機能管理の有無と手術後の肺炎発生率と死亡率の関係を調べる解析が東京大学で行われました。その結果、口腔機能管理を受けた患者は受けていない患者と比較して、肺炎の発症率が3.8%から3.3%に低下し、手術後30日以内の死亡率は0.42%から0.30%に低下しました。がん手術前の患者に対する歯科医師による口腔機能管理によって、手術後の肺炎発症率と死亡率を減少させることがわかりました。
口腔ケアの重要性
口腔ケアをオーラルケアとも言います。口腔ケアとは、虫歯や歯周病の予防のために、歯間ブラシや舌専用ブラシなどのケア用品を使い、歯や口の中を清潔に保つ手入れをすることをいいます。
歯ブラシで毎日しっかり歯磨きをしているから大丈夫だと思っておられませんか。ブラッシングがしっかりできていると思っても実は磨き残しがあるのです。歯ブラシだけでは限界があり、歯ブラシだけに頼るのではなく、歯の部位に合わせて歯間ブラシなどを取り入れることがオススメです。歯間ブラシは鏡を見ながら鉛筆を持つように持って磨きます。歯肉を傷つけないように、ゆっくりと挿入していただき、歯間ブラシを水平にして、2〜3回往復させて清掃してください。また、ブラッシングの後に水流洗浄ケアをすることも口腔ケアにとって、とても効果があります。
歯間ブラシを使う上での注意事項
- 歯と歯のすき間に合ったサイズを選んでください。歯の隙間に合わせて歯間ブラシを変えて磨いてください。
- (選び方のポイントは歯と歯の間にスッと抵抗なく挿入でき、動かすときにきついと感じない程度の大きさを選んでください)
- 歯によってすき間の広さが異なる場合、数種類の歯間ブラシを用意して使い分けてください。
- 歯肉炎のある部位は、軽い刺激でも出血しやすくなっています。
- 強引に動かすとブラシやワイヤーで歯や歯肉を傷つける恐れがあるので注意してください。
- 使い方がわからない場合は、当院にご相談ください。
口腔ケアの状況(引用:厚労省)
デンタルフロスや歯間ブラシを用いた歯間部清掃を行っている者は30.6%、舌清掃を行っている者は16.6%だった。 男女別に見るとほぼすべての年代で女性の方が歯間部清掃または舌清掃割合を行っている者の割合が高かった。40~70代の女性は5割以上がデンタルフロスや歯間ブラシを用いた歯間部清掃を行っていた(表34、図34・35)。
健康はお口から、口腔ケアの効果