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お口の成長と発達を促す「口育」の重要性
こんにちは、皆さん。私は歯科医師の小出貴照です。今日は、赤ちゃんとお母さんのために大切なお口の成長と発達についてお話ししたいと思います。
口育とは?
「口育」という言葉をご存知でしょうか?この言葉は、0歳の頃からお口が正しく成長や発育をするように促進し、お口周りから全身の健康な発育を目指すことを指します。
呼吸と嚥下(食事を飲み込むこと)は、人が生きていくうえで非常に大切ですよね。この2つが正しくできない場合、お口だけでなく全身や生命の維持にさえ関わる大きな問題になります。
従来より、お口の成長に異常があると診断された場合は、MFT(筋機能療法)という口周りの筋肉のバランスを整える治療がありました。
しかし、「口育」はお口の成長に異常が出る前に予防・対策を行うことで、0歳の頃からお口が正しく成長・発達するように促進していくのです。
近年、呼吸と嚥下、また、話すことにおいて不正常な子供が増えているとされています。
口腔育成は、成長期の早い段階から口呼吸や舌の位置、指しゃぶりなどの悪影響を取り除き、正しい噛み合わせを促進する治療方法です。
以下は口腔育成についての詳細です
- 治療対象年齢 口腔育成は、あごの成長が止まるまでの期間が治療対象です。早期に治療を開始すると効果が高まります。通常、5歳から8歳が予防矯正のゴールデンエイジとされています。
- 治療内容:予防矯正治療では、歯並びの乱れの原因を特定し、改善・指導・トレーニングを行います。口腔内の機能不全を改善し、正しい成長発育を促します。具体的な治療内容には、以下が含まれます
- 舌の位置と筋肉のバランス:舌があごの口蓋部に触れる位置を維持し、上あごの成長を促します。
- 姿勢の改善:正しい姿勢を保つことであごの発育に影響を与えます。
- 異常歯列の修正:歯並びの問題を解決し、上あごを広げて永久歯のスペースを整えます。
- 治療目的
- 正しい嚥下、鼻呼吸、安静時の口の閉鎖、舌の上あご接触、健康的な顔面発育、正しい姿勢、キレイな歯列を目指します。
- 将来、口だけでなく心身ともに病気になりにくい健康な体を作ることがゴールです。
- 予防矯正の開始時期:最適な治療対象年齢は0歳から12歳です。
マウスピースや矯正装置を使用した予防矯正は、上あごが成長中であること、お子様が理解できる年齢であることが重要です。 - 予防矯正のトレーニング:治療は医院での治療だけでなく、ご自宅でのトレーニングも重要です。正しい呼吸や飲み込み、口まわりの筋肉のバランスを整えるトレーニングを行います。
お子様の口腔育成は、将来の健康に大きく影響を与える重要な取り組みです。
お口が正しく発達しないと、「口腔機能発達不全症」になってしまい、呼吸や嚥下だけでなく、歯並びや全身へ大きな影響を与えてしまいます。
口腔機能発達不全症とは?
口腔機能発達不全症とは、平成30年に日本歯科医学会から出された「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」によると、明らかな障害はないのに「食べる機能」「話す機能」「口周りのその他の機能」が十分に発達していない、あるいは正常に機能獲得ができていない状態のことを言います。
上手に噛めない、飲み込めていない、発音がおかしい、口呼吸をしている、いびきなどの症状があります。
これらの口腔機能発達不全症の症状を放っておくと、顎の成長不足やそれに伴い歯並びが悪くなる、呼吸がしづらくなることも。
また、口腔機能発達不全症によって食事が上手に食べられないことで、身長や体重などの身体の成長発育にも影響が出てしまいます。
赤ちゃんのための口腔育成アドバイス
引用:愛知県歯科医師会
0歳児からの摂食・嚥下指導
乳幼児期における親との食器共有について
「むし歯はうつる」という話を聞いたことはありませんか?
大人が使ったスプーンを赤ちゃんの口に入れたり、大人の唾液が赤ちゃんのお口に入るとうつると言うお話です。
実はこれらを気をつけていても、むし歯の発生率はあまり変わらないことがわかってきています。
うつるのは、虫歯の原因となる菌だけではないことや、気をつけていても、どこかでうつってしまうからだと思われます。
令和5年8月31日
一般社団法人日本口腔衛生学会
以前から、親から子どもへのう蝕原因菌の感染を予防するために、親とスプーンやコップなどの食器の共有を避けるようにとの情報が広がっています。
しかし、食器の共有をしないことでう蝕予防できるということの科学的根拠は必ずしも強いものではありません。
最近、親の唾液に接触することが子どものアレルギーを予防する可能性を示す研究内容が報道されました。
それに付随し、親の唾液からう蝕の原因になるミュータンスレンサ球菌が子どもに感染するリスクを高めると報道で触れられていますので、情報発信をいたします。
親からの口腔細菌感染は食器の共有の前から起こっている
最近の研究で、生後4か月に母親の口腔細菌が子どもに伝播していることが確認されています。
食器の共有は離乳食開始時期の生後5~6か月頃から始まりますが、それ以前から親から子どもに口腔細菌は感染しているのです。
日々の親子のスキンシップを通して子どもは親の唾液に接触しますので、食器の共有を避けるなどの方法で口腔細菌の感染を防ぐことを気にしすぎる必要はありません。
う蝕の原因菌は、ミュータンスレンサ球菌だけではない
親のミュータンスレンサ球菌が子どもに感染することは複数の研究で確認されています。
しかし口腔内には数百種以上の細菌が存在し、ミュータンスレンサ球菌だけでなく多くの口腔細菌が酸を産生し、う蝕の原因となりますので、ミュータンス連鎖球菌だけがう蝕の原因菌ではありません。
食器の共有に気を付けていても、子どものう蝕に差はなかった
う蝕は砂糖摂取や歯みがきなど様々な要因で起こるため、食器の共有と子どものう蝕の関連を調べる際にはそうした要因を考慮する必要があります。
う蝕に関連する複数の要因を調べた日本の研究では、3歳児において親との食器共有とう蝕との関連性は認められていません。
子どものう蝕予防のために
親から子どもに口腔細菌が伝播したとしても、砂糖の摂取を控え、親が毎日仕上げみがきを行って歯垢を除去し、またフッ化物を利用することでう蝕を予防することができます。
赤ちゃんのいるお母さまに歯科からお伝えできること
よくお母さん方から聞かれること
質問:妊娠、出産すると赤ちゃんにカルシウムを取られて歯が脆くなるって本当ですか?
答え:まったく根拠のない話です。
妊娠中に赤ちゃんが歯のカルシウムを取って歯が脆くなるという話は、都市伝説的なものであり、科学的には裏付けられていません。
歯のカルシウムは、お母さんの身体から赤ちゃんに移行することはありません。
しかし、妊娠中はお口のトラブルが起こりやすい時期です。以下に詳細を説明します。
- 妊娠性歯肉炎: 妊娠中のホルモンの影響で特定の細菌が増え、歯ぐきの炎症を引き起こす病気です。妊娠中は歯周病菌が増加しやすいため、歯垢の管理に注意が必要です。
- つわりと口腔清掃: 妊娠初期のつわりにより、お口の中が頻繁に食べ物や胃液にさらされます。歯みがきが難しくなることもあります。
- 虫歯リスク: 妊娠中は食事や間食回数が増え、歯垢(口内細菌)の増加が見られます。虫歯のリスクが高まります。
人見知りが始まると赤ちゃんが抱っこさせてくれなくなるかもしれません。お母さんのむし歯治療は、お子さんの人見知りが始まる前に済ませておきましょう。
赤ちゃんの人見知り
人見知りは、個人差があり、過ごしている環境や家族構成も影響します。人見知りが早ければ良い、遅ければ悪いということはありません。
赤ちゃんが人見知りする時期はいつからいつまで?
人見知りはいつからいつまで
赤ちゃんの人見知りは生後8カ月から12カ月ごろに始まり、2歳ごろには落ち着くといわれています。
しかし個性や家族環境などによって状況が異なるため、生後6カ月ごろから始まる子もいれば、2歳を過ぎてから始まる子もいます。(個性や環境により異なります)
人見知りは成長の証です。心の成長に伴い少しずつおさまっていくので、焦らず見守っていきましょう。
歯科医院へのはじめての受診はいつ頃から?
保護者の方で歯科への受診のタイミングに迷ってられる方は少なくありません。
むし歯ができたら歯科へ行くと思っている方が今までは多く見受けられましたが、近年は歯科検診やむし歯予防のために乳幼児期から定期検診を受けることが浸透してきました。
生まれたばかりの赤ちゃんは歯が少ないから、むし歯にならないと思っておられる保護者の方も少なからずおられます。
歯科への受診の目安は、歯が生え、離乳食を開始したタイミングで受診いただければと思います。
口腔機能の問題を予防するための理想は「歯が生える前から」と覚えておいてください。
離乳食はいつから?
離乳食を始めるタイミングは、早すぎても遅すぎてもいけません。離乳食の始めどきは5〜6ヶ月ごろから。
5〜6ヶ月頃になると、赤ちゃんの消化器官や口腔機能がかなり発達し、おっぱいやミルク以外の食べ物を受け入れられるようになります。
この時期に離乳食を始めることで、さらに消化器官や口腔の成長が促進されます。
個人差はありますが、生後6ヶ月頃から下の前歯が生え始め、その後に前歯、奥歯と順番に生えます。
虫歯のリスクは、歯が生え始めたときから始まります。
離乳食や飲み物、生活環境、歯磨きなどによって、お口の中の環境は左右され、虫歯のリスクもそれぞれ異なります。1歳児健診や3歳児健診で、すでに虫歯ができているお子さまもいます。
早い段階から、歯医者で適切な歯磨きや食生活についての指導を受け、実践していくことが今後の虫歯予防へつながります。
母乳には乳糖と言う糖が含まれていますが、基本的には母乳だけではむし歯にはならないので、他の甘い食べ物に気をつけていれば大丈夫です。
とはいえ、全く甘いものを摂らないのも難しいので、摂り方のポイントをお伝えします。
甘いものに限らず、ご飯やパンなど糖質を含む食品を食べると、菌が酸をだし、歯が溶け出してしまいますが、これを修復してくれるのが「唾液」です。
溶けかけた歯を修復するには1時間ほどかかると言われています。
この間に次の食べ物、次の飲み物とダラダラ口にしていると、歯は溶けっぱなしです。
酸を出す菌も増えてしまうので、ダラダラ食べは禁物です!
寝ている間は唾液があまり出なくなりますので、寝る直前の飲食も気をつけてくださいね。
赤ちゃんの歯磨きの仕方
赤ちゃんの歯磨き方法は以下の通りです。
- 赤ちゃんを仰向けに寝かせ、膝の上に頭を乗せる。
- 唇を軽くめくり、もう片方の手で歯ブラシを持つように持ち、前後または横に動かして磨く。
- 歯磨き中に赤ちゃんが頭を動かすと口の中を傷つけてしまう恐れがあるため、歯ブラシを口の中に入れる際は赤ちゃんの頭をしっかりと固定してから入れる。
- 歯ブラシを前後または横に動かして磨く。
- 歯を1本ずつ丁寧に磨く。
永久歯の土台となる乳歯のケアは、その後の歯の成長に大きく影響します。
赤ちゃんが自分で歯磨きをすることができない時期には、親がしっかりとケアを行うことが重要です。
これにより、将来の歯の健康を守ることができます。
赤ちゃんが小さい間は、歯磨きを嫌がって逃げ回ることもあるかもしれませんし、親も苦労することもあるでしょう。しかし、根気よく続けて歯磨きを習慣化していきましょう。