日本人の8割は、歯周病とも言われていることを知っていますか?
実は、歯を失う原因で一番多いのが、「歯周病」で、虫歯より多いのが実状です。 こうした中、近年、歯周病が認知症の原因の1つになっているのではないか、という研究結果が発表され、注目を集めています。
歯周病を放置していると、認知症が進行することも知っていますか?
厚労省によると認知症は年々増加し、2025年には有病者数は700万人になり、65歳以上の5人に1人が認知症になると試算されています。認知症にはいくつか種類があり、その多くは脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症です。
歯周病は50歳代以上の約80%がかかっている疾患です。一般的に、歯周病というと、口の中の病気と捉えられがちですが、最近の研究では認知症とも関わっていることが分かってきています。
認知症!まずは歯科へ
認知症と歯科って直接は関係ないと思うでしょう。でも歯医者さんでの早期の対応でその後に大きな違いがでるのです。
認知症と診断されたらまず、歯科へ行って、将来歯科受診が難しくなる時に備えて、しっかり口の中を再整備しておいてほしいのです。
歯科受診が難しくなるって??どういうこと?
認知症の方は、歯の痛みや口の中の不具合を言葉で表現することが苦手になります。
また、認知症の方に歯ブラシを渡したときに過去の習慣もあって、歯を磨く動作をされる方が多くいらっしゃいますが、実際には歯の中を拝見すると磨けていないことが多くあります。
口の中はバイ菌でいっぱいです。口の機能が低下するとますますバイ菌が増えてきます。うがいができなくなるとますます菌が増殖します。
認知症がすすんで口を開けてもらえなくなったとしても歯科医院でしっかりチェックは受けていただきたいです。
認知症の進行段階によって歯科医師はどうすることがベストなのかを多くの経験から判断します。
【認知症の進行段階に応じての治療方法】
定期的に歯科受診をしていただき問題がないかのチェックを受けてください。また、その際、患者さんだけでなくご家族や介助される方も一緒に口の中の状態や今後のケアのアドバイスを受けていただくと良いですね。
引用:日本歯科医師会
歯周病とは?
歯周病は、歯周病菌に感染することによっておこる炎症性の病気です。それは、歯の磨き残しがきっかけで発症します。歯の磨き方がきちっとできていないと歯と歯肉のすきまに細菌がたまり、それが炎症をおこして歯肉や歯槽骨を溶かします。
歯周病がもたらす全身病とは?
歯周病が全身に及ぼす影響としては、例えば「心筋梗塞・狭心症」があります。歯と心臓、あまり関係ないように思われますが、どう関係しているのか。これまで動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、別の因子として歯周病原因菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。
歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク=お粥状の脂肪性沈着物ができ、血液の通り道は細くなるのです。プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰まったり、血管の細いところで詰まったり、という流れで起こります。
そのほか、歯周病は、「糖尿病」「肺疾患」「脳梗塞」「早産、低体重・未熟児出産」などのリスクが高まるといわれています。こうした中で、最近注目されているのが「認知症」との関係です。
歯周病と認知症の関係とは?
認知症の原因となる病気はいくつもありますが、もっとも患者が多いのがアルツハイマー病です。短期記憶などをつかさどる脳の海馬などを中心に、大脳全体に萎縮がおこる病気です。
このアルツハイマー病と歯周病の関係について、最初に指摘されたのは2013年です。海外の研究でアルツハイマー病の患者の脳から、歯周病の原因菌であるジンジバリスキン、略して「Pg菌」が見つかったことがきっかけになりました。
その結果、歯周病菌を投与して作った歯周病のマウスは、そうでないマウスに比べて認知機能が低下したり、脳内にアルツハイマー病特有の炎症やアルツハイマー病の患者の脳に見られるシミが認められたという報告が相次いで出てきました。
脳にシミができる?
この脳のシミですが、正式名称も「老人斑」ということで、あまりいい響きではないのですが、アルツハイマー病の原因は、脳内に「アミロイドβ(ベータ)」というたんぱく質のゴミがたまることだと考えられていますが、これがたまってできるのが「老人斑」です。つまり、歯周病菌がこの老人斑を増やすことに関与していたのです。
さらに脳の中を調べると、歯周病菌がつくりだす毒素も増加していたことがわかったのです。毒素が強くなることによって、脳の炎症も強くなり、本来は外からの敵に対して攻撃するはずの免疫細胞が異常に活性化してしまって、脳の神経細胞を攻撃し、神経伝達にも異常がおきていた。つまり、歯周病菌がアルツハイマー病を増悪させていることがわかったのです。
これは動物実験でのことでしたが、今年の1月にはアメリカの研究で人間でも同じことが確認されました。
ほかにも、アルツハイマー病と歯周病との関連性を示す研究があります。
例えば、歯周病の原因菌によって作られる、口臭の原因となっている「酪酸」という物質。この酪酸を健康なラットの歯肉に注射したところ、脳内の各部位で酸化ストレスが上昇しました。なかでも、記憶をつかさどる「海馬」でのストレスが顕著だったそうです。酸化ストレスのために、細胞や組織が悪影響を受け、認知機能が低下するのではないか、という可能性は十分考えられるところです。
このように歯周病と認知症=特にアルツハイマー病との関連は研究が進んでいて、今後、対策なども出てくるでしょう。
それを待つのではなく、今から対策を始めておくべきです。
歯周病は歯肉炎の段階であれば、正しいブラッシングで健康な状態に戻せます。しかし、歯周炎になってしまうと専門的な治療が必要になってしまいます。歯肉より上はその人自身の責任、歯肉より下は歯科医の責任。歯周病の予防・治療・改善には、歯周病専門の歯科医と2人3脚で歩むのが重要なポイントです。
引用:松井宏夫の「日本全国8時です」歯周病が体に及ぼす影響について、認知症との関係(TBSラジオ、月曜あさ8時~)