皆さんは「口腔機能低下症」という言葉をご存知でしょうか?
口腔機能低下症はその名の通り、口の中の大事な機能が低下していく症状です。原因は主に加齢ですが、その他にも疾患や障害など様々な要因があります。
歯科クリニックでは、歯や歯茎の機能だけではなく、こういったお口全体の機能についても気をくばりながら治療をしています。
また、この口腔機能低下症は50歳以上の方に関して保険治療が適応されます。
口腔機能が低下することは、歯は生えていてもうまく噛めなくなったり、ご飯が上手に食べれなくなってしまう原因につながるので、治療により、早く治すことが大切です。
今回はそもそもこの症状はなんなのか、どうしたら予防できるのかについて知識を深めていこうと思います。
口腔機能低下症とは
日本歯科医学会では『口腔機能低下症に関する基本的な考え方』を提示しています。この考え方の中で、口腔機能低下症は「加齢だけでなく、疾患や障害など様々な要因によって口腔の機能が複合的に低下している疾患」と定めています。
お口の機能は、以下の大きく5つに分類されます。
咀嚼(そしゃく):食べた物を「噛む」機能。
嚥下(えんげ):食べ物や飲み物、唾液などを「飲み込む」機能。
構音(こうおん):舌や唇を使って「言葉を作る」機能。
唾液(だえき):食事や口腔内の清潔のために「唾液を分泌する」機能。
感覚(かんかく):食事や発声のために、口腔内の状態を感じて理解する機能。
これらの機能が綿密に組み合わさって「食べる」「話す」という活動につながっています。
加齢などの影響で、どれかひとつの機能がうまく動かなくなると、徐々に他の機能にも影響していくため、注意する必要があります。
口腔機能低下症の主な症状と検査の方法
口腔機能低下症の主な症状としては以下の6つが挙げられます。
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1口腔衛生状態不良
口腔には 700 種以上の微生物が存在します。口腔内に常在する微生物は、外からのウイルスの侵入を防ぐ機能を担っていたりもしますが、中には虫歯や歯周病など口腔疾患を引き起こし、免疫力が低下した場合には感染を引き起こすことがあります。
こうした微生物の付着は舌の状態を見ればよくわかります。
舌苔の付着度を見ることで口腔内の衛生状態がわかります。
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2口腔乾燥
お口の中の水分量も口腔機能を確かめる重要な要素です。
口腔水分量を図る口腔水分計ムーカスという装置があります。その装置を舌粘膜の先端から 10mm の舌背部分に2秒間押し付けることで、計測します。
その他にも、乾燥したガーゼ(2g)を2分間咬んで、増加した重量で唾液量を測定します。増量が2g以下である場合、口腔内が乾燥しているという判断になります。
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3咬合力低下
こちらもデンタルプレスケールという機械を用いて測定します。
ある一定の基準を満たない場合、噛む力が低下しているとみられます。
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4舌口唇運動機能低下
「パ」「タ」「カ」をそれぞれ5秒間発音し、口唇や舌の動きを測定します。
5秒間での合計発音数を計測し、1秒当たりの回数を算出します。
「パ」「タ」「カ」の1秒当たりの回数がいずれかで6回未満になった時、運動機能が低下しているとみなされます。
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5低舌圧
上の図は健常者の舌の圧力の基準をグラフにしたものです。
血圧や眼圧など、臓器の圧に関してはさまざまなものがありますが、舌にも圧力があり、それを計測する機械が存在します。プローブという機械です。
そちらをお口に入れ、その前側にあるリングを前歯で軽く噛んだ状態で、上顎に7秒間押し付けます。その圧力が30kPa未満であると診断された場合、低舌圧であると言う判断になります。
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6咀嚼機能低下
こちらは咀嚼の力を図る方法の一例です。
色々な会社が出しているグミゼリーがあり、そちらを上記のようによく噛んで、吐き出した水に含まれるブドウ糖の値を検査基準とするものです。
この他にも、グミがどれくらい噛めているのかを見るスコア法など、さまざまな方法があります。
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7嚥下機能低下
こちらは簡単なアンケートに答えることで測定します。
普段の生活での「飲み込み」について
『問題なし、全くそうは思わなかった』は0点 、『めったにそうは思わなかった』は 1点『ときどきそう思うことがあった』は 2点、『よくそう思った』は 3点、 『ひどく問題、いつもそう思った』は4点としてアンケートに答えます。
3点以上で嚥下機能が低下してるという判断となります。
口腔機能低下の背景にある「口呼吸」
では、口の中の機能を低下させないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?
こういった症状はご自身では自覚できないまま進行することが多く、早期の発見がその後引き起こされる誤嚥性肺炎や窒息などの後遺症の誘発につながります。
誤嚥性肺炎などを引き起こす大きな原因の一つに、「口呼吸」があります。
ふと気づくと口をポカンと開けている人、風邪をひきやすい人、姿勢が悪い人、イビキをかく人…こんな人は、口で息をしているのかもしれません。
口呼吸を防ぐためには、日中であれば意識して口を閉じ、鼻呼吸をすることが大切です。特に、長時間マスクをしていると、息苦しさもあり、鼻と口の両方での呼吸になりがちです。苦しいときに無理をして口を閉じる必要はありませんが、マスクを外す場面など、気づいたときに意識するように心がけましょう。
夜間、就寝中は無意識になり、呼吸を自分でコントロールすることができません。加湿機能のあるマスクをして寝たり、唇の両端にハの字形にテープを貼って筋肉の緩みを抑え、口が開くのを防いだりする方法があります。いびきをかいている場合も口呼吸になっていると考えられます。あごを押さえるチンストラップやマウスピースなどの医療器具もあります。
やってみよう!「あいうべ体操」
口呼吸を防ぐためのお口のトレーニングを一つご紹介しましょう!
その名も「あいうべ体操」です!
あいうべ体操とは、口呼吸を鼻呼吸に改善していく簡単な口の体操です。いつでもどこでも誰でもできる「あいうべ体操」は食後に10回、一日30回を目安に地道に続けると、舌力がついて自然を口を閉じることができるようになります。
あいうべ体操のやり方は、次の4つの動作を順にくり返します。声は出しても出さなくてもかまいません。
(1)「あー」と口を大きく開く
(2)「いー」と口を大きく横に広げる
(3)「うー」と口を強く前に突き出す
(4)「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす
(1)~(4)を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けます。
口呼吸の改善は、あらゆる病気の原因治療につながります。
あいうべ体操をしっかり継続している人は、自然に鼻で呼吸ができるようになり、アレルギー性疾患等の症状が改善していくことがあります。
口呼吸を防ぎ、健康的に口腔ケアを!
いかがでしたでしょうか?
お口を正しく機能させるためにもあいうべ体操をはじめとした適度なトレーニングで、いつまでも若々しい口腔機能の低下を防ぐようにしましょう。
日進市の「歯科オーラルクリニック エクラ」では、口腔機能の低下を見逃さず、全てのお客様に健康的なお口を保っていただくための治療やアドバイスをしています。
口腔機能低下症は50歳以上の方に関して保険治療が適応され、安価な費用で治療を受けることができます。
少しでもお口の状態で心配なことがある場合は、是非歯科クリニックでの治療をおすすめします。
専門的な知識と皆様に寄り添ったカウンセリングで、お口周りの筋力低下を予防、衛生状態を保つお手伝いをいたしますので、ぜひ、お電話でご連絡ください!
最後までお読みいただきありがとうございました。