2024年6月1日から保険適応範囲が変わり歯科医院で口腔機能発達不全症は治せるようになります。
口腔機能発達不全症の重大な影響
口腔機能発達不全症(Oral Dysfunction Syndrome)は、口腔機能発達不全症は、口の周りの筋肉や機能が正常に発達しない状態をいいます。
これは、嚥下(飲み込み)、咀嚼(噛む)、発音、そして顔の表情筋の発達に影響を与えます。特に小児期にこの症状が現れることが多いですが、大人にも影響を及ぼすことがあります。
大人における影響
大人にも口腔機能発達不全症が見られることがあります。この場合、特に女性においては、以下のような影響が報告されています。
1. ほうれい線が目立つ: 口の周りの筋肉が弱いため、ほうれい線が深くなり、目立つようになります。
2. 顔がたるむ: 顔の筋肉が十分に機能していないため、顔全体がたるみやすくなります。これにより、見た目の年齢が実年齢よりも老けて見えることがあります。
3. 発音の問題: 大人でも発音が不明瞭になることがあり、これが社会生活においてコミュニケーションの障害になることがあります。
小児期における影響
1. 嚥下の問題: 正常な嚥下ができないため、食事中にむせたり、飲み込みが難しくなることがあります。
2. 咀嚼の問題: 正しく噛むことができないため、消化不良や栄養不足になる可能性があります。
3. 発音の問題: 言葉を正しく発音できないため、コミュニケーションに支障をきたすことがあります。
4. 顔の発達: 顔の骨格や筋肉の発達が不十分になることで、顔立ちが変わる可能性があります。
お子さんが口をぽかん(ぽかーん)と開けていませんか?
子どもに見られる「お口ぽかん」とは、日常的に口が開いたままの状態のことをいいます。
「お口が開いているよ」と指摘すると一時的に口を閉じますが、すぐにまたお口ぽかん状態に戻ってしまいます。
この状態は、専門的には「口唇閉鎖不全症(こうしんへいさふぜんしょう)」と呼ばれています。では、なぜこのお口ぽかんは起こるのでしょうか?
1. 鼻づまり
鼻づまりが原因で鼻呼吸が難しくなると、口で呼吸する習慣がつきやすくなります。
アレルギーや風邪、鼻炎などが原因で鼻が詰まっていると、無意識のうちに口呼吸をするようになります。
2. 口の筋力不足
口の周りの筋肉が十分に発達していないと、口を閉じるのが難しくなります。
特に、子どもの場合、口の周りの筋肉がまだ十分に強くないため、口を閉じ続けることが難しくなります。
3. 不適切な習慣
食事中やテレビを見ている時など、無意識に口を開けてしまう習慣がついている場合もあります。
これが習慣化すると、日常的に口を開けている状態が続きます。
4. 歯並びの問題
不正咬合(噛み合わせの問題)があると、口を閉じるのが難しくなることがあります。
例えば、上顎前突(上の前歯が前に出ている状態)や開咬(前歯が噛み合わない状態)などが原因で、口唇閉鎖不全症が引き起こされることがあります。
5. 口腔内の異常
舌や口の中の異常も口唇閉鎖不全症の原因になります。
舌の筋力が弱い、舌の位置が正しくないなどの問題があると、口を閉じるのが難しくなります。
6. 顔がゆがみやすくなる
お口ほかんの状態が続くと、口周りの筋肉やあごの骨が十分に発達せず、顔にゆがみが生じることがあります。
「あごがない」「あごと首の境目が曖昧」「顔が間延びしている」といった特徴的な顔つきは、アデノイド顔貌(がんぼう)と呼ばれます。
口腔機能発達不全症のチェックリスト
各項目に対してチェックを入れることで、口腔機能発達不全症の兆候を早期に発見し、適切な対応を取ることができます。
項目 | チェック |
---|---|
1. 口を閉じるのが難しい | |
2. 口呼吸をしている | |
3. 眠っている間に口が開いている | |
4. 嚥下時に異常な動きが見られる(舌を押し出す、口の周りが動くなど) | |
5. しばしば食べ物を噛まずに飲み込む | |
6. 発音が不明瞭 | |
7. 唇や口の周りの筋肉が弱い | |
8. 顔の骨格に異常が見られる(あごが後退している、顔が長いなど) | |
9. 歯並びが悪い(不正咬合) | |
10. よだれが多い | |
11. 口内炎や口腔内のトラブルが頻繁に起こる | |
12. 頬の内側に歯の跡がついている | |
13. 唇が乾燥しやすい | |
14. 食事中によくむせる | |
15. 鼻づまりが多い |
口ぽかんが引き起こすトラブル
この「お口ぽかん」の状態が続くと、どのような問題が発生しやすくなるのでしょうか。
- 口内が乾燥してむし歯や歯周病のリスクが高まる
- 口呼吸により唾液が減少し、口内が乾燥します。これは虫歯や歯周病の原因となります。
- 改善方法: 正しい口の閉じ方をトレーニングし、口呼吸を防ぐことが大切です。
- 風邪やアレルギーになりやすい
- 口呼吸は鼻毛のフィルターがないため、細菌やウイルスが喉につきやすくなります。
- 改善方法: 鼻呼吸を促すトレーニングを行い、口を適切に閉じる習慣をつけましょう。
- 歯並びが悪くなりやすい
- 口呼吸で舌が下がることで、歯を押し出す原因となります。
- 改善方法: 口まわりの筋肉を鍛える体操やガム噛みを行い、口を閉じる習慣を身につけましょう。
- 集中力・学力が低下する
- 口が開いている状態では良質な睡眠がとれず、集中力が低下します。
- 改善方法: 正しい姿勢で寝ることや、口を閉じるトレーニングを行いましょう。
お口ほかんを改善する方法
鼻呼吸を促す
鼻詰まりを解消しましょう。アレルギーや風邪で鼻が詰まっているときは、耳鼻科の診察を受け、適切な治療を行いましょう。
特に夜間の鼻づまりは、口呼吸の原因になります。
口周りの筋肉を鍛える
フーセンガムを膨らませることは口周りの筋肉を鍛えるのに良いトレーニングになります。
ただし、ガムはノンシュガータイプや、虫歯予防効果のあるキシリトール入りを選ぶようにしましょう。
口腔筋機能療法(MFT)
口腔筋機能療法(MFT)とは、歯列を取り巻く舌、唇、頬などの筋肉を強化し、正しく機能させるための訓練法です。
小さな子どもであれば、歯並びが悪くなるのを防ぐことができますし、すでに歯並びが気になる場合でも、適切に訓練することで矯正治療をスムーズに進めることができます。
家でも簡単にできるMFTのエクササイズを取り入れましょう。例えば、「んー」と声を出しながら口を閉じたり、舌を上顎に押し付ける練習などです。
参考
口腔筋機能療法(MFT)についてはこちらに記事をまとめております。
食事中の姿勢を改善する
食事中は背筋を伸ばし、足を地面にしっかりつけた正しい姿勢で座るようにしましょう。これにより、自然と口を閉じる習慣がつきます。
良い習慣をつける
子どもが口を閉じる習慣をつけるために、親が日常的に声をかけることが大切です。「口を閉じてみようね」と優しく言ってあげてください。
口呼吸が病気の根源
「あいうべ体操」で誰でも簡単にどこでも出来る予防治療をオススメします。
あいうべ体操は、口の周りの筋肉を鍛え、口腔機能の改善に役立つエクササイズです。簡単にできるので、お子さんと一緒に楽しく行えます。以下に、あいうべ体操の手順を説明します。
あいうべ体操エクササイズ
1. 「あ」のポーズ
- 口を大きく開ける:
- 口を大きく開けて、「あー」と声を出します。
- 顎を大きく動かすことを意識しましょう。
- この状態を2秒間維持します。
2. 「い」のポーズ
- 口を横に広げる:
- 口角を左右に引っ張り、「いー」と声を出します。
- 頬の筋肉をしっかりと使い、口を横に広げるようにしましょう。
- この状態を2秒間維持します。
3. 「う」のポーズ
- 口を前に突き出す:
- 唇を前に突き出し、「うー」と声を出します。
- 唇を尖らせるように意識しましょう。
- この状態を2秒間維持します。
4. 「べ」のポーズ
- 舌を出す:
- 舌をできるだけ前に突き出し、「べー」と声を出します。
- 舌をしっかりと前に出し、顎を引くように意識します。
- この状態を2秒間維持します。
5. 繰り返す
- 繰り返し行う:
- 「あ」、「い」、「う」、「べ」を1セットとして、1日に30セット(合計120回)を目安に行いましょう。
- 無理のない範囲で、楽しみながら続けてください。
あいうべ体操は、簡単にできる口腔機能のトレーニングです。毎日続けることで、口の周りの筋肉が鍛えられ、口腔機能が改善されます。ぜひお子さんと一緒に楽しみながら取り組んでみてください。健康な口腔環境を維持するための一助となることでしょう。
ご質問やご相談がございましたら、いつでもお問い合わせください。
口腔機能発達不全症の主な原因
- 筋肉の弱さ: 口腔周囲の筋肉が弱いため、口を閉じる力が弱く、食べ物を効率的に咀嚼したり、しっかりと飲み込んだりすることが難しい。
- 筋肉の協調不良: 口腔内の筋肉間の協調が取れず、効果的な咀嚼動作や嚥下が行えない。
- 神経系の問題: 中枢神経系の問題により、口腔周囲の筋肉の動きが制御できない。
口腔機能発達不全症の影響
- 栄養不良: 効果的に食べ物を咀嚼し、摂取することが困難になるため、栄養不良に陥りやすい。
- 発音の問題: 口腔の筋肉が適切に機能しないため、正確な発音が難しくなる。
- 口腔衛生の問題: 口を清潔に保つことが難しくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まる。
口腔機能発達不全症の対策
- リハビリテーション: 口腔周囲の筋肉を強化し、適切な機能を促すためのトレーニング。
- 食事介助: 食事の形状を調整し、摂取しやすくする。
- 言語聴覚士との協力: 発音の問題に対して、言語療法を行う。
口腔機能発達不全症は、口の周りの筋肉や機能が正常に発達しない状態で、小児期に多く見られますが、大人にも影響を及ぼすことがあります。特に女性においては、ほうれい線が目立つ、顔がたるむといった美容面での影響が顕著です。早期の診断と治療が重要であり、口腔筋機能療法や歯列矯正、言語療法などが有効です。
この情報が皆様のお役に立てば幸いです。ご質問やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問合せください。
医師としての立場から、口腔機能発達不全症の早期発見と適切な介入が、患者の生活の質を向上させる上で非常に重要です。
口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方
日本歯科医学会が令和6年3月、「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」を発表した内容を抜粋しておきます。詳しくは下記の「参考文献」をご確認ください。
年齢性別標準値と指導を行うべき値について
小児は年齢とともに機能を獲得(ハビリテーション)していくために、口唇閉鎖力は年齢毎に標準値が異 なる。そのため口唇閉鎖力が正常か否かの診断には、口唇閉鎖力の測定を行い、年齢および性別に応じた標 準値と比較し、年齢毎に診断する必要がある。また小児はその成長発育に個人差が大きく、その時点だけで 口唇閉鎖力の平均値と標準偏差を基準にして評価するのは危険である。そのため身長、体重のように成長曲 線グラフの中で評価していく(男女の口唇閉鎖力平均値と標準偏差、発達曲線を参照)。
(歯科用口唇筋力固定装置 りっぷるくんⓇによるデータ)
年齢別・性別の標準値と指導を行うべき値
口唇閉鎖力検査と同様に、小児は年齢とともに機能を獲得(ハビリテーション)していくために、最大舌 圧も年齢毎に標準値が異なる。正常か否かの診断には、年齢および性別に応じた標準値と比較し、年齢毎に 診断する必要がある。そして小児はその成長発育に個人差が大きく、その時点だけで平均値と標準偏差を基 準にして評価するのは危険であり、そのため身長、体重のように成長曲線グラフの中で評価していくことが 求められる。
当院(歯科オーラルクリニックエクラ)でも、早期に発見して検査とトレーニングを行い、改善できるようにします。