今回は、糖尿病と歯周病の怖い関係について説明させていただきます。
歯周病と糖尿病
歯周病と糖尿病は密接な関係があります。糖尿病患者は歯周病にかかりやすく、逆に歯周病があると血糖コントロールが悪化することが言われています。
最新の研究によれば、歯周病を適切に治療すると血糖値が改善することもわかっています。
歯周病は、成人が歯を失う最も一般的な原因であり、日本の40歳以上の半数以上が認められ、年齢とともに患者の割合が増加します。
歯周病の原因は歯の表面につく「プラーク」、つまり歯垢の残りかすです。このプラークは歯の表面に細菌の被膜を形成し、バリアのように働いています。
これが「バイオフィルム」とも呼ばれます。このバイオフィルムは薬物の浸透を防ぐため、水や洗口剤などで口をすすいでも取り除くことが難しいです。
しかし、歯磨き(ブラッシング)で簡単に取り除けるため、ブラッシングが非常に重要です。
糖尿病とはどんな病気?
糖尿病は、血液中のブドウ糖が増えすぎる病気で、インスリンが十分に働かないことが原因です。高血糖になると、心臓病、失明、腎不全、足の切断などの合併症のリスクが上がります。糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、その他の特定の機序や疾患によるもの、そして妊娠糖尿病の4つの種類があります。
糖尿病は一般的に、以下の主な種類に分類されます。
- Type 1 Diabetes (1型糖尿病):
- 免疫系が誤ってインスリン産生を担当する膵島細胞を攻撃し、結果として体が十分なインスリンを生成できなくなる自己免疫疾患。
- ほとんどインスリンが出なくなるため、治療にはインスリンの注射が必要です。
- Type 2 Diabetes (2型糖尿病):
- 体が十分なインスリンを生成できるが、細胞が効果的にそれを利用できない状態。
- 主に成人で発症し、生活習慣や遺伝的な要因が影響することがある。
- インスリンが出にくくなったり、効きにくくなったりして、血糖値が上昇します。糖尿病の症状には、喉が渇く、水をよく飲む、尿の回数が増える、体重が減る、疲れやすくなるなどがあります。
- Gestational Diabetes (妊娠糖尿病):
- 妊娠中に一時的に高い血糖値が見られる状態。
- 通常、妊娠中に血糖値の管理が重要であり、母体や胎児の健康に影響を与える可能性がある。
糖尿病の症状には、多尿、過度な喉の渇き、体重の急激な減少、疲労感、視力の変化などが含まれます。また、未治療の状態での高血糖は、心血管疾患、腎臓疾患、神経障害などの合併症を引き起こす可能性があります。
糖尿病の管理には、定期的な血糖モニタリング、健康な食事、運動、必要に応じた薬物療法やインスリン注射が含まれます。早期の診断と効果的な管理は、合併症のリスクを減少させ、患者の生活の質を向上させる重要な要素です。医師や医療チームと協力して、個々の状態に合った治療プランを確立することがとても重要です。
糖尿病の合併症
糖尿病の合併症は、長期間にわたって高血糖が続くことによって引き起こされる可能性があります。高血糖は全身の血管や臓器に損傷を与え、様々な健康問題を引き起こすことがあります。以下に、主な糖尿病の合併症を詳しく解説します。
1. 心血管疾患
高血糖が血管を損傷し、動脈硬化を促進する可能性があります。これにより、心臓病や脳卒中などの心血管疾患のリスクが増加します。
2. 視力障害
糖尿病性網膜症と呼ばれる病変が眼の網膜を損傷することがあります。この症状が進行すると、失明のリスクが高まります。
3. 腎臓病
高血糖が腎臓の機能を損傷し、糖尿病性腎症と呼ばれる状態が発生します。最終的には腎不全に進展する可能性があります。
4. 神経障害
糖尿病性神経障害が神経を損傷し、手足の知覚異常、痺れ、疼痛を引き起こすことがあります。これは特に末梢神経に影響を与えることがよくあります。
5. 足の合併症
糖尿病性足病変は、足の血流が悪くなることで潰瘍や感染症を引き起こしやすくなります。これが進行すると、足の切断が必要となることがあります。
6. 高血圧
糖尿病患者は高血圧のリスクが高まります。高血糖が血管を損傷するため、血圧が上昇しやすくなります。
7. 高脂血症
糖尿病は、脂質異常症を引き起こしやすくなります。これにより、動脈硬化や心血管疾患のリスクが増加します。
これらの合併症は、早期に糖尿病を診断し、適切な治療や管理を行うことで予防できる可能性があります。定期的な医師の診察と血糖モニタリング、生活習慣の改善が、合併症の予防や進行の抑制に役立ちます。
糖尿病と歯周病の密接な関係
糖尿病と歯周病は密接に関係しています。糖尿病患者は歯周病にかかりやすく、逆に歯周病があると血糖コントロールが悪くなることが分かっています。
歯周病は主にプラークが原因で、成人が歯を失う最も一般的な理由です。歯周病治療には、正しいブラッシングの指導や歯石除去(スケーリング)が含まれます。
最近の研究によれば、歯周病の適切な治療が行われると、血糖値が改善することも分かっています。
まとめ
糖尿病と歯周病は密接に関連しています。
糖尿病患者は歯周病にかかりやすく、逆に歯周病があると血糖コントロールが悪化します。
歯周病は成人が歯を失う最も一般的な原因であり、日本の40歳以上の半数以上が認められ、患者の割合は年齢とともに増加します。
歯周病の原因は歯の表面に付着した「プラーク」、通称歯垢の磨き残しです。プラークは歯の表面に細菌が被膜を形成し、バリアとなります。
歯周病の原因となる細菌は歯と歯肉の隙間で増殖し、「歯周ポケット」に炎症を引き起こし、歯を支える骨を溶かしてしまいます。
歯周病によって口腔内および歯周ポケット内の環境変化、易感染性、高血糖下における炎症増幅などが生じ、糖尿病患者は一般の人と比べて2.6倍も歯周病にかかりやすくなるという研究データもあります。
歯周病に関する知識がある方は、ない方と比較して、口腔内観察を行い歯みがき時間が長いなどの口腔内衛生習慣が優れているという研究結果もあります。
歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという研究成果も報告されています。歯周病の治療には、患者ご自身のブラッシングによるプラークコントロールを徹底し、歯科医院で炎症の原因となっている歯石を確実に取り除く(スケーリング)ことが必要です。
最後に、ホームケアとプロケアの重要性について
むし歯や歯周病の予防には、歯磨きが非常に重要ですが、果たしてその歯磨きが本当に効果的なのでしょうか。
「磨いている」と思っているだけではありませんか。むし歯や歯周病の原因となる歯垢をしっかりと除去することが予防の鍵です。
歯ブラシ1本では歯磨きは完璧!?
歯ブラシ1本だけでは、どうしても磨き残しがあります。
歯ブラシだけでは歯垢の約6割しか取り除けないと言われています。これは、歯の隙間に食べカスがたまりやすく、歯ブラシだけでは細かい部分まできちんとケアできないからです。
歯ブラシとデンタルフロスを組み合わせると、約8割まで除去でき、歯間ブラシを使うと8割5分まで効果的です。歯ブラシでのブラッシングを基本に、定期的に歯間ブラシやデンタルフロスを使った歯間ケアを行うことがオススメです。
デンタルフロスや歯間ブラシを歯磨きに加えることで、歯の間や歯と歯の隙間に蓄積した歯垢や食物のカスを効果的に取り除くことができます。歯ブラシだけでは届きにくい部分をきれいに保つことができます。
歯の隙間についた汚れは、普段の歯磨きでは落としきれないことがよくあります。表面だけでなく見えない部分の汚れも取り除いていきましょう。そのためにも自宅での歯間ケアも定期的に行うことが大切です。
歯ブラシだけでは歯垢の約6割しか取り除けない。
歯ブラシに加えてデンタルフロスを使うことで、その除去率が80%まで向上するとされています。
歯の表面をみがくだけでなく、歯と歯ぐきの間のケアも大切です。
歯間ブラシや、デンタルフロスを用いて、力をかけず丁寧に、歯と歯の間の汚れを落としてください
デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで、歯の表面や歯と歯の間の汚れをより徹底的に取り除くことができ、口腔内の清潔を保つのに役立ちます。
歯の隙間の汚れ
歯の隙間の汚れは、普段の歯磨きではなかなか落としきれません。残ったままの汚れは歯垢に変わり、時間がたつと歯石になり、一層落としにくくなります。
歯石は虫歯や歯周病の原因にもなりかねません。歯のクリーニングは、歯科専用の器具を使って頑固な歯の汚れを取り除き、歯茎の中まで丁寧にケアします。
着色汚れやヤニも除去し、最後に電動ブラシと研磨剤を使用して歯の表面や隙間を磨きます。これが歯のクリーニングの一般的な流れです。
定期的に歯科医院でメンテナンス
プロのメンテナンスを受けることで更に予防率があがります。
約80%のプラークがうまく除去できても、どうしてもとりきれない細かなすき間の汚れや歯石、バイオフィルムは付着したままです。
一度付着してしまうと、歯ブラシでは落としきれません。落としきれない汚れを放置しておくと、むし歯や歯周病のリスクが高くなりますので、歯科医院で専用の器具を使用して除去してもらうことが必要です。
プラーク除去率残りの20%を歯科医院のプロケアで除去していきましょう。
バイオフィルムの形成は約100日周期だといわれています。歯石の付着しやすさには個人差はありますが、毎月〜3カ月に1回のメンテナンスがオススメです。
家でのしっかりとした「ホームケア」と歯科医院での「プロケア」両輪をバランスよく行うことが、むし歯と歯周病予防に大きくつながります。
歯科オーラルクリニックエクラでは、患者様のお口の状態に合わせた、最適なケアの方法を指導しています。
いつまでも、健口でいるために、一緒に健康管理に取り組んでいきましょう。