知り合いの新人歯科衛生士がこのようなことを言っていたことがあります。
『歯茎から血が出ているのをそのまま放置している人っているよね。安心して。
最悪歯が抜けて、病気になるから…フフフ』
衛生士のその黒い笑顔に少しギョッとしてしまったのですが、実はこの言葉、あながち間違ってはいないのです。
今回はお口の中の巨大疾患である歯周病と、それがもたらす病気について、最新の治療例も紹介しながらお話ししようと思います。
歯周病をナメたらあかん!
以前の記事の中でもお話ししている通り、歯周病はお口の中で一番身近で、一番かかりやすく、一番気をつけるべき疾患であると言えます。
言うなれば虫歯も気をつけなければいけない疾患ではありますが、歯周病は虫歯のように直接的な痛みを伴っていなくても進行している場合が多く、虫歯以上に気をつけてケアをしていかなければなりません。
進行に気づかないまま放置し、歯肉に影響がでて歯が抜けてしまうことは、何も珍しいことではないのです。
非運動性のグラム陰性偏性嫌気性。慢性歯周炎に関わる最重要細菌と言われている他、上部消化管、気道、結腸にも生息している。むし歯菌とは多くの場合、このミュータンス菌を指すことが多くあります。タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)
基本的に酸素のないところを好む通性嫌気性菌です。歯周病の原因となる細菌で、ジンジバリス菌と共に歯周病を増悪することが報告されています。
トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)
嫌気性のグラム陰性菌で、らせん状の形で錐揉み運動をしています。重度歯周炎の病巣からの検出頻度が高いとされており、この菌が免疫抑制作用に関わっているともいわれています。
お口の中には、およそ300~500種類程度の細菌が、住んでいるといわれています。
糖分をたくさん摂ったときなどの歯に付いた食物のかけらや糖分は、そういった細菌たちのエサになります。
たくさんのエサがある状態が続くと、細菌たちはネバネバした物質を作り出し、これが歯の表面にくっつき、歯垢(プラーク)となります。
歯垢(プラーク)は粘着性が強く強いうがいでも落ちることはありません。
歯垢1㎎の中には、10億個もの細菌が住んでいるといわれており、これが歯周病やむし歯の原因となるのです。
では、歯周病になると、歯や歯ぐきには、どのような変化が起こるのでしょうか。
歯垢は固くなると、歯石と呼ばれるようになります。また、歯垢や歯石が歯についたままでいると、歯と歯ぐきの境目に炎症が起こり赤く腫れてきたり、歯磨きの時に出血することがあります。さらに進行すると、歯と歯ぐきの境目が深くなり、歯周ポケットができ、やがて歯を支えている骨が溶け始め、グラグラと歯が動いてきてしまいます。
最初にお話しした「歯が抜けることになってしまう」というのはこの為なのです。
歯周病が引き起こす様々な病気
ここからは歯周病が引き起こす、あらゆる病気を見ていこうと思います。
歯周病になって悪化したら歯が抜ける…だけでは済まされません。
一見、お口周りとは無関係に思われる、体内のありとあらゆる不調が引き起こされ、様々な病気が発症するきっかけとなります。
step
1糖尿病
歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が報告されています。
重度の歯周病により生じた物質や、「サイトカイン」と呼ばれる炎症や免疫反応によりつくられるタンパク質が血管から全身をめぐることで、糖の代謝を妨げ、インスリンが作用しにくくなります。サイトカインのバランスが崩れ、制御できなくなると歯周病の炎症が悪化し、インスリンもさらに作用しにくくなり、糖尿病が悪化するのです。
step
2心臓疾患
歯周病菌は血管を通じて心臓へも入り込みます。
入り込んだ菌は心臓の弁や内膜などで炎症を起こしたり、心臓に酸素や栄養を送る血管にこびりついて「アテローム」と呼ばれるドロドロとした脂肪の塊を作り、血管を狭くしてしまうのです。
心臓だけでなく、脳の血管へ入り込めば脳卒中、動脈に入り込めば動脈硬化の原因になります。
step
3低体重児早産
女性の方の体にも歯周病は大きな病気を引き起こしかねません。
一般に妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。
これには女性ホルモンが大きく関わってくるといわれており、特にエストロゲンという女性ホルモンがある特定の歯周病原細菌の増殖を促すことと、歯肉を形作る細胞がエストロゲンの標的となることが知られています。
そのほかプロゲステロンというホルモンは炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。これらのホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になるといわれており、このため妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎が起こりやすくなるのです。
油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もありますので、注意が必要です。
さらに、妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなることが指摘されています。
口の中の歯周病細菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかといわれています。その危険率は実に7倍にものぼるといわれ、タバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高確率です。
歯周病、最新の治療法
歯肉炎、歯周病の予防にはまずは毎日歯みがきを怠らない、歯科医院でのこまめな口内チェックが欠かせません。
とはいえ、根本的に歯周病を治すには歯周病の原因菌を徹底除去する必要があるのですが、歯周病菌は非常に広い範囲に、かつ細胞の奥深くまで侵入しているため、歯みがきの除去レベルにどうしても限界がありました。そういった場合にはどうしたら良いか。
それが今注目されている「高気圧酸素」を用いた治療です。
歯周病菌は酸素を嫌う細菌であるため、その唯一の弱点である酸素を毛細血管を通して送り込むことで、ブラッシングや外科的治療では除去しきれないような細胞内に潜んでいる歯周病菌まで殺菌します。
さらに高気圧酸素療法は新陳代謝を高める作用もありますので、医療現場においてはインプラント手術や外科手術を行った後の回復促進などにも活用されています。
歯周病予防は生活習慣悪化の予防!
いかがでしたでしょうか?
歯周病を放置しておくことによる危険性、歯医者さんの必要性を十分に感じていただけたでしょうか?
歯周病菌は全身に影響します。
放置すれば菌は全身に行き渡り、顕微鏡やPCR検査などで歯周病菌を特定し除菌する治療をしなければいけません。
そうならないように歯周病を予防するためには、早めに歯周治療を行い、歯科医師によるこまめな検診が必要です。
日進市の「歯科オーラルクリニック エクラ」では、歯周病治療に関する専門的な情報をご提供します。一生にわたって健康なご自身の歯を健康に保つ、歯周病ゼロの「ペリオフリー」を目指して予防と治療を行っています。
専門的な知識と皆様に寄り添ったカウンセリングで、歯肉炎や歯周病を予防、治療するお手伝いをいたします。
口の中が少しネバネバするとか、体の不調など、お体の状態で気になることが少しでもありましたら遠慮なくご相談ください。気になるところはお口の中の不調が原因であり、少しでも予防できる可能性があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。