前回、口腔機能不全症についてのお話をしたかと思います。
今回も、そんなお口の働きの疾患についてのお話をします。
お口の機能の低下が健康な生活を送るのにどれほど大切で、そのための国の制度がどのように備わっているかということについて、知識を深めていただければと思います。
口腔機能発達不全症ってなあに
口腔機能発達不全症とは、15歳未満の小児で障害がないにも関わらず、食べる、話すなどの口の機能が十分に発達していない状態をいいます。
前回お話しした口腔機能不全症は老齢になると進んでいく症状でありましたが、今回は子供に見られる口腔内症状です。
多くの小児が上手くかめない、飲み込めない、発音がおかしい、口呼吸、いびきなど、口の機能に何らかの問題をもっていることか知られています。
このような小児期の口の機能の問題は、生涯にわたって様々な悪影響を全身に及ぼします。
国はそのような現状を問題にして、2018年に口腔機能発達不全症という病名をつけ、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士らのもとで治療をおこなう方針を示しました。
病名がつけられたのと同時に、18歳以下の方に健康保険治療が適応できることになりました。
口腔機能発達不全の治療
口腔機能発達不全症は、患者数は非常に多いものの、本人や保護者も気付いていないことが多い傾向があります。
小児期に口の機能が発達しないと、かみ合わせや歯並びが悪くなるだけでなく、栄養摂取が不十分となったり、認知機能(記憶、思考、理解、学習、言語)が未発達になることがあります。
成人になってからも小児期の影響は続き、肥満、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病の発症、高齢になってからのオーラルフレイル(口の機能低下)、誤嚥性肺炎、介護の要因となります。
治療は下記項目の改善を中心におこなわれます。
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1歯の萌出遅延(歯がなかなか生えてこない)
歯が生えるのが乳歯で6ヶ月以上、永久歯で1年以上遅れているときは、口腔機能発達不全症となることがあるため、歯科医師と相談しながら何らかの対応をとっていきます。
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2食の問題(食べる量にムラがある、偏食が強い、食が細い、食べる時間が長い)
哺乳量や食べる量、回数にムラがある、偏食が強く同じものばかり食べている、食が細く体重が増えない、食べる時間が長いといったことがあると、口の機能は正常に発達しません。
管理栄養士と相談しながら(栄養相談、栄養指導)、食事内容、方法の改善をおこなっていきます。
飲み込む機能(嚥下機能)、大きな虫歯、口の渇き(ドライマウス)が原因であれば、これらを治していきます。
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3口呼吸(口唇閉鎖不全症)
いつも口がぽかんとあいていたり唇が閉じない状態では、無意識のうちに口から呼吸をしていることがあります。
口呼吸は、かみ合わせや歯並びを悪くするだけでなく、大人になってからの睡眠時無呼吸症候群や糖尿病の原因にもなります。歯科医院や自宅でトレーニングをおこないながら改善していきます。
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4口腔習癖(お口まわりの癖)
指しゃぶり、つめ咬みといった癖は、口周囲の筋肉に悪影響を及ぼします。
このような癖を『口腔習癖』と言います。
こういった行為は連鎖する傾向にあり、指しゃぶりが口呼吸、歯並びの悪化、発音障害、低舌位、いびき、睡眠時無呼吸症候群の発症へとつながっていくこともあります。
早期に悪循環を断ち切ることが大切となります。
指しゃぶりは本人にとって癒しの効果もあるため、3~5歳では心理面や生活リズムを整えることで、自然な形でやめさせていくのが通常です。ただ永久歯が生えてきても癖が続いている場合は治らないことが多いため、そういった場合は本人に自覚してもらうほか、歯科医院にてトレーニングをおこなうことにより改善していきます。
主な口腔習癖
指しゃぶり
つめ咬み
舌を前に出す
唇を咬んだり吸う
飲み込むときに舌を前に出す
低舌位
おしゃぶりの常用
タオルしゃぶり
頬杖
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5発音(構音)障害
発音障害があると決まった音が正しく発音できず、言いたいことが相手にうまく伝わらなかったり、周囲とのコミュニケーションに支障をきたします。
歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士のもとで発音の訓練をおこなうほか、舌小帯は舌の裏側についているヒダで、このヒダが短いのが原因であれば切除することにより改善していきます。
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6いびき、睡眠時無呼吸症候群
鼻がつまっている、口で息をしているといった呼吸の問題、扁桃肥大により、いびき、睡眠時無呼吸症候群を発症します。小児のいびき、睡眠時無呼吸症候群は、歯並びを悪くして大人になってからの睡眠時無呼吸症候群の発症要因となるため、早期の改善が必要となります。
治療では鼻の治療、口のトレーニング、矯正治療(床矯正)、手術などをおこないます。
口腔機能発達不全の発見方法
では、この口腔機能発達不全、どのように発見していくのでしょうか?
少しでも疑いがある場合、まずは歯科医師に相談します。
その際の診断には、以下のような「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」(日本歯科医学会)に示されている評価項目を使用します。
15歳未満の患者で、評価項目(C1〜12)のうち2つ以上に該当する場合に「口腔機能発達不全症」と診断することができます。
また、「口腔機能発達不全症」と診断した患者で、さらに評価項目(C1〜17) から1つ以上に該当する場合には「 小児口腔機能管理料加算」により管理を行うことが可能になります。小児口腔機能管理料とは、15歳未満の口腔機能の発達不全を認める患者に対し、口腔機能の獲得を目的とした指導をする場合に月1回100点を加算というものです。
つまり、ちゃんとした口腔機能を手に入れるために管理する制度があると言うことです。
専門的医療で口腔機能発達不全症についての知識を
いかがでしたでしょうか?
口腔機能発達不全症と診断できたら保険診療で改善を試みることが可能です。
保険料や管理料などの加算により診断や治療がしやすい制度があるうちに、お子さんのお口周りの状態について今一度確認し、何か不自然なこと、心配なことがあった場合は早めに歯科医師に相談し、対処することが重要です。
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