実は虫歯と歯周病は感染症の一つとして考えられています。
乳歯がそろってきた赤ちゃんの時は虫歯菌や歯周病菌の保有率はほぼ0です。
それが成長の過程で、家族の中に虫歯治療中の方が要れば感染の危険度は飛躍的に上がります。
食事で同じものをつついたり同じ食器などを使用したりするときに伝染する事がわかっています。
もちろんスキンシップの場合もそうです。
キスしたことによってお互いの唾液によりその菌が伝染するのです。
これは、家族同様のペットにも同様の結果があると確認がされています。
余談ですが、最近話題の新型コロナウイルスでも、ヒトからペットへの感染が起こるという症例が出て来ています。
動物を飼育する方向けQ&A(7月7日時点版)
これまでに新型コロナウイルスに感染したヒトからイヌ、ネコが感染したと考えられる事例が数例報告されています。また、動物園のトラやライオンの感染(飼育員から感染したと推察されている)事例も報告されています。
ただし、新型コロナウイルスは主に発症したヒトからヒトへの飛沫感染や接触感染により感染することが分かっており、現時点では、ヒトから動物への感染事例はわずかな数に限られています。厚生労働省ホームページ参照
今回は、なぜ虫歯が発生するのか? そのメカニズムについて調べた結果をお伝えいたします。
感染経路を考える
ひとえに虫歯菌と言っても数種類あります、代表格はミュータンス菌、ラクトバチラス菌。
その他に口の中には悪玉菌と善玉菌を合わせて300~400種類の細菌が住みついているといわれています。
では、本来は口内細菌などの虫歯菌がどのようなルートで感染し広がっていくのかを考察いたします。
先ほどお伝えしたように虫歯菌は、人から人に感染します。特に問題になるのがミュータンス菌です。
ミュータンス菌は、一旦口の中に大量に取り込んでしまうと除菌する事が大変でやっかいなのが最大の問題です。
虫歯菌の中にはラクトバチラス菌という細菌もいます。
この細菌は徹底的にプラークコントロールすることで、口腔内からほぼ排除出来ます。
1,親子感染
幼児の時に母親などの養育者が虫歯疾患を持っていた場合、食事やスキンシップなどから感染する場合があります。
感染しやすいのは1歳半~3歳くらい。
最も身近な存在からの感染ルートですし本人が警戒する事が出来ない時期に感染してしまいますので、
感染経路の代表となっています。
2,大人同士のキス(KISS)
次に多いのが、キス(KISS)です。
日本では家族でも頻繁にキスをする習慣は無いにしても、
欧米の文化の影響もあり次第に広がってはいますね。
その中でも、大人になってから交際相手が出来た後のスキンシップでキスは当たり前になります。
もしお相手が、虫歯の治療中などであれば自分も感染するのは逃れにくいです。
ぜひ、確認を(笑)。
3,ペットとのスキンシップ
犬と猫の飼育が一般家庭において大変普及しています。
特に愛犬が口元をペロペロしてくるのは、
イヌにとっての愛情表現であります。
毎日のスキンシップで愛犬とキスをしたりしたときに、
人の口から犬の口へ虫歯菌が「移る」事が事例で報告があがっています。
4,関節キッスの可能性
直接的なキスだけでなく、飲み物や食器などの共有の様に、
間接的なものでも相手に虫歯があれば感染の可能性はあるということなので、
カップルだけでなく、家族やお友達でも、その可能性は0ではありません。
対応策を考える
虫歯になりやすい人、なりにくい人は居るの?その人の体質によっても変わります。
かかりやすい人かかりにくい人、それは唾液量で変わると言われています。よく知られている事ですが。
唾液の量が多い人は虫歯になるリスクは下がります。
唾液が多いと、食事後は口の中が酸性に傾きます、虫歯菌が好む環境ですね。
その酸性になった腔内を唾液が多いと中和してくれやすくなるからです。
分泌される唾液がサラサラしているとなお良く、
歯の間についた食べ物のカスを洗い流してくれる作用もあるので虫歯になりにくくなります。
唾液がたくさん出すには、水分を多く摂取するなどして乾燥しない様にします。
常に意識して水分補給をすることが大事です。
しかし、摂る水分はジュースやお酒は控えてなるべく糖質の少ないものを選ぶことが重要になってきます。
糖質は虫歯菌の大好物ですし、唾液が粘つきやすくなるからです。
また、元々産まれ持っている歯の質が強いという事など、
その人の生まれ持った資質によっても虫歯のなりやすさは変わってきます。
酸によって溶けやすい歯の人、溶けにくい歯の人がいるということです。
対応策1,水分を沢山摂取する。
健康維持のための観点からも、一日2リットルの水分補給を目指す。
糖質の多いジュース類は避ける。
対応策2,隣人との間接的な食器の交換を控える。
唾液が付着した器をシェアしない事。
対応策3,虫歯治療中の方は、家族やペットに移さない様に配慮する。
対応策2と同じで、唾液が付着した器のシェアをしないことや、
虫歯は感染すると言う認識を持つことが大事です。
幼児に対しては、特に配慮が必要であり食事の時にフーフーしてあげたり、
いったんお口の中で嚙み砕いて柔らかくして与えるなどは決してしないでください。
特におじいちゃんおばあちゃんがお孫さんにしてあげる事が原因になっている事もあります。
*マメ知識*
お話の途中ですが、今回調べている途中で分かった事があります。
なんと!
ペットでも猫には、ヒトの虫歯菌は感染しないとのこと。
結論からいうと、猫はいわゆる「虫歯」にはなりません。
ヒトの虫歯は、口の中の細菌が作り出した酸によって、歯が溶けてしまいます。
それを齲蝕/うしょくと呼びます。
「虫歯菌」と言いますが、
虫歯を引き起こす細菌たちです。
中でも代表的なのがミュータンス菌(Streptococcus mutans)だとお伝えしましたね、
本題の猫が虫歯にならない理由、そのひとつとして、
ヒトと猫では口腔内のpH値が違っており、
pH値がアルカリ性ならこうした虫歯菌が生息しにくい環境だそうです。
ヒトの口腔内のpH値は6.5~7.0と弱酸性ですが、
猫の口腔内のpH値はpH 7.5~8.5とややアルカリ性よりなのです。
よって前述したミュータンス菌は、特に酸性の環境を好むため、猫の口腔内では増殖しにくいと伝えられています。
これには諸説ありますが、猫はあまり人の顔をペロペロしてこないのも理由の一つでもあるようですが。
またその他には、ヒトと猫の歯の形状の違いが考えられています。
ヒトの歯が食べ物をすりつぶすための臼型(うすがた)であるのに対し、
猫の歯は肉を噛みちぎるために『はさみ型』をしています。
臼型(うすがた)の歯では食べ物のカスや細菌が溜まりやすいので、
これでは虫歯の原因となるミュータンス菌が増殖しやすい環境を作ってしまいます。
猫の歯には臼型がないため、汚れや細菌が残りにくいとも言えます。
ただし、あくまで実験上の報告ではありますが、
『はさみ型』の歯を持っている犬も同じアルカリ性の唾液です。
その犬に糖分の多い食事を試験的に長期間継続した結果虫歯菌が繁殖したと報告があります。
犬は猫よりもヒトとのコミュニケーションの取り方が密になりやすく、
ベロでペロペロする習慣もあり伝染する可能性が高いといえます。
つまり通常の生活では、猫が虫歯になることは無いと言う結論に至ります。
以上の事を踏まえると家族同然のペットにも条件がそろえば虫歯菌をヒトから伝染させることが分かりました。
猫は比較的虫歯菌には耐性があるとわかっていますが、
『歯周病』では、少し事情が変わるようです。
ここからは、歯周病について調べてまいります。
先ずは、ヒトの例を考察します。
増える有病率、50歳以上は85%
歯周病は、歯を取り囲む歯周組織の慢性炎症で、歯の脱落を引き起こす慢性感染症である。歯ぐきと歯の間にできる歯周ポケットは、歯垢が原因。日本では、有病率が増える傾向にある。 天野教授は、口から食道、胃、腸などの人間の器官を「土管」と呼んで、「体内を通る土管内はまさに外界で、バクテリアのすみかとなっている」と表現する。菌の数は口の歯垢1㌘あたりに約1000億個もあり、直腸の便と同じくらいだ。 「細菌リスク検査」は、予防歯科外来で受け付ける。歯垢、唾液を採取して検査し、その結果をもとに歯周病の細菌リスクを説明する。保険適用外であるため、検査料は1万2400円。これ以外にも、五つの生活習慣病のリスクを判定する「体質遺伝子検査」、歯周病や口臭に影響を与えるレベルを測定する「ストレスマーカー検査」「タバコ曝露レベル検査」なども行っている。
(本記事の内容は、2012年12月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)
歯周病も感染するの?
はい、虫歯菌と同じ経路で感染します。
どちらも、菌の保有者との唾液の交換が条件でありますが、まれに空気感染もあると言われています。
虫歯と歯周病の違いについて
簡単に説明すると、虫歯は『歯』の病気、
歯周病は『骨』の病気。
どちらも感染病になります。
虫歯菌は、ミュータンス菌が代表格で歯を溶かしてしまいます。
歯周病菌は、主に『嫌気性細菌』と言われ空気に触れることを嫌る性質があり、
歯や歯茎の中で増殖し歯を支える骨などを壊してしまいますが、
歯には全く影響を及ば差ない事がわかっています。
治療法に違いは?
虫歯と歯周病は、違う症状であったり違う菌が原因ですが、
お互いに有効な治療法は、『丁寧なブラッシングの習慣化』です。
歯の表面や歯茎の隙間などを、丁寧にブラッシングしプラークを残さない様にします。
また、定期的に歯科医院で磨き漏れや感染していないか等のチェックも忘れない様にしましょう。
もちろん、今回の趣旨にあるペットへの配慮もヒトと同様大事になります。
動物病院では、ペットの口腔内のケアも行ってくれますので、医師とご相談ください。
「歯周病」は猫にも存在する。
猫はヒトのような虫歯にはなりません。
しかし、虫歯にはならないですが、口腔内の病気が全くないとは言えないのです。
実は、猫の歯の病気で最も多いとされるのは『歯周病』や『歯肉炎』で、
猫の口腔疾患のうち、半数が『歯周病』や『歯肉炎』だと言われています。
歯石の付着をそのままにしていたりすると、歯肉炎になります。
気付かず治療をしないと悪化によって歯周病に進行します、
口腔内のニオイがくさくなったり歯茎が腫れるなどと言った症状が現れます。
歯がグラグラすると言うひどい状態にも発展する恐れがありますので、
ヒトと同じように定期的に、検査をしてあげてください。
最後に飛沫感染もあるのかを検証しましたのでお伝えします。
飛沫感染の可能性
新型コロナウィルスの登場により飛沫感染対策が、国を挙げての取り組みとなっていますが、
コロナ以前より飛沫感染の恐れがあるのが、『インフルエンザ』『風邪』『虫歯や歯周病』です。
こと『虫歯や歯周病』については、飛沫感染の危険性はまれであるとされています。
よっぽど顔を近くにした状態が長時間続かない限り、それこそ唾が飛び交う議論などをした場合など。
飛沫感染の危険性は否めません。
まとめ
1,『虫歯』と『歯周病』は感染するの?
直接の唾液の交換により感染します。
2,ペットにも?
はい、特に犬は飼育環境により感染の可能性は高くなっています。
3,予防策は?
普段からの心がけにより、感染を抑えることが出来ます。
特に子供さんに対しては注意が必要です、親から子へ、祖父母から孫へ、
ペットから子供へは受ける側が予防しにくいので周りの大人たちが気を付けて下さい。
4,治療法は?
丁寧なブラッシングを毎日の習慣にすることや、
歯医者での定期的な検査を受け適切な治療を受けることです。
以上、歯周病の脅威、犬からの感染、人間から犬への感染(唾液からの感染)についてお伝えいたしました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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